なにゆゑに旅に出づるや
2021-03-06
「なにゆゑに旅に出づるや、なにゆゑに旅に出づるや、何故に旅に」(若山牧水『死か藝術か』より)
命の限り旅は続く
人生は旅である。古来から多くの詩歌人が旅に出て、その感慨をことばに表現してきた。だがなぜ旅に出るのだろう?「道祖神の招き(『おくのほそ道』の冒頭の一節)」なのか?はてまた「流れる雲を追いかけて」なのか?冒頭に記した牧水の歌は、旅に誘われてしまう自分という存在を自問自答した一首である。「五・七」のリズムが読点(「、」)を上手く配して再現され、最終句の「五・八」という字余り感が人間の永遠のテーマであることを実感させてくれる。新型コロナ禍で旅に出るのが憚られる今こそ、思考の旅に自問自答する時かもしれない。僕らは今も果てなき旅の途中なのである。
ともに仕事に向き合った同僚が、職場を移動することになった。その挨拶を聞き、あらためて前述したような思いが巡った。出生地ではないこの地で大学に勤務し、家族とともに生活をすることそのものが旅でもある。しかし、人生は旅であるゆえ「此処」で出逢う車窓からの光景に自らを投影し何かを語る必要がある。その出逢いから得られるものが、自らの「旅」にどんな意味をもたらすのか?牧水が出生地である宮崎を離れ、東京で恋と短歌の世界を旅し、静岡の沼津を終の棲家(ついのすみか)としたことにも牧水の短歌の偉業に大きな影響があった。かの地で出逢えた人・物・事に、自らの人生の旅がどんな反応をしていくか。この奇跡のような偶然を、自らの人生にいかに意味付けるか?はなむけの思いは、すべて自らの自問自答として帰って来るものである。
地方の生き方が見直される今
僕は10年も前からその旅にあくがれていた
去りゆく友の言葉が自らの旅を炙り出すのである。
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