生活言語と短歌のことば
2020-12-16
生活を成り立たせる言語広告や営利目的のCMの言葉
短歌を成り立たせる彩のあることば
生活上の言語は、誰でもどのような状況下でも分かりやすく、多様な解釈を生まないものが求められる。街頭の表示板やアナウンスが多様な解釈を生んでしまっては、道ゆく人々は混乱してしまうであろう。見やすく分かりやすい万人が理解できるのが、生活言語である。昨今はこのような一般常識に適った言語の理解にも及ばない場合があるのか、共通理解を教え込まないとならなくなったのかもしれない。情報の適切な読み方とか常識的な解釈などという、生活の中で学ぶべき内容を学習課程の中に押し込めているようにも見える。
明治時代の法律の条文は、「漢文訓読体」で記されている。それはまさに多様な解釈を生まないため。国家のあらゆる「法」は、解釈する者によって多様であっては成り立たないからである。こうした生活言語や広告宣伝文の言葉と短歌のことばは、根本的に相違がある。もちろん「誰もが情景を想像できる」ことは大切であるが、その上でことばを突き詰め解釈を反転させたり上下左右の視点に移行したり「彩」の中で多様に動く運動体なのである。額面通りの表層で理解できるものではなく、深層の混沌とした模索や思考の格闘を経てのちのことばである。1300年の短歌史の上に身を置くというのは、こうした意志ある矜持があることなのだ。
文化のないスカスカな言語が溢れる社会で
奥行きのある歴史を掘り返すようなことば
読むものに迎合しない「直立した詩」に僕らは向き合っている。
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