否定せず当人が悟る教育
2020-12-04
「風姿花伝」第一に示される教育論発達段階ごとの論は現代において傾聴に値する
「主体的対話的」の原点のような
文学史講義は中世の締め括りとして、「能楽論と教育」というテーマで世阿弥の能楽論「風姿花伝(花伝書)」を読んだ。単に能楽の指南書というばかりではなく、稽古の上で注意すべきことが、発達段階(年齢)ごとに示されていて教育学部の教材として学生たちに資するものである。特に「七歳(小学校1年生)」「十二三歳(中学校一年生)」「十七八歳(高卒・大学1年生)」「二十四五歳(社会人3年目)」などと、現代の学制の節目に対応するのも大変に興味深い。「七歳」の教育は細かいことを指摘して行動を否定することなく、思うように動きたいようにさせておくのがよいとされている。早期教育の盛んなご時世、何がよいのかを考えさせられる内容だ。
まさに「型通り」なのが日本の教育の一つの特徴である。その結果、横並びを志向し飛び抜けた特異な存在となることを嫌う。「誤り」が事細かに指摘され、決められた理想の「型」になるべく育てられる。その「型」を基本だとし習得していないと、その先の段階にはいけないと考えがちである。その結果、「国語」であれば漢字の誤りを指摘され、音読する際の読み間違いを指摘され、作文も談話も「この型」で書きなさいと強制される。自らのその場の心から発する自然なことばなどは、決して大切にされない。野球でも「フォーム固め」が大切で、実際にどれほど良い球が投げられるか、巧打ができるかという個性的な現実よりも「綺麗だと指導者が考え押し付けたフォーム」が優先される傾向にある。いわば「個性」が伸びないような教育の結果が、現代社会を築いていると言えるのではないか。
伝統を学び個性も尊重するには
心身の調和など学ぶべき点が多い
伝承されるとはいかなることか今一度、親も教師も考えるべきではないか。
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