「忘却とは忘れ去ることなり」ラジオドラマ再考
2020-11-17
「忘却とは忘れ去ることなり、忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」
(ラジオドラマ「君の名は」冒頭より)
朝の連続テレビ小説「エール」で今週は、ラジオドラマ「君の名は」の制作に関する内容となった。脚本家・菊田一夫と作曲家・古関裕而が1952年から1954年にかけて制作し、NHKラジオで放送され爆発的な人気を博したことを題材としている。番組のナレーションにもあったが、当時は「番組が始まる時間になると、銭湯の女湯から人が消える」と云うほどの社会現象になったそうである。その後は映画化もされたことで、ヒロイン・真知子のストールの巻き方が「真知子巻き」と呼ばれ社会全体への波及効果は大きいものがあったようだ。また当時のラジオドラマは「生放送」であったらしく、劇中の音楽は古関裕而がハモンドオルガンで奏で即興的に奏でていたことも連続テレビ小説通り知られることだ。
ラジオドラマ「君の名は」は、当初は社会派を目指していたために人気が出なかったが、真知子と春樹の恋にストーリーが集中し始めたことが大ヒットの要因になったらしい。連続テレビ小説でも描かれたように、キャストの関係でやむを得ずストーリーを先に進められない事情が生み出した偶然である。逢えそうで逢えないすれ違い、そのモジモジした真知子と春樹の心情に多くの視聴者はくすぐられたことだろう。恋愛を描く文学はいつもそうだが、その恋愛の成就ではなくそれまでの苦難や破局への道が描かれて行く。冒頭に記した名文が加藤幸子や鎌田彌恵の語りで流される、ラジオドラマならではの語りの響と間と・・・「君の名は」。
いまあらためてラジオドラマを再考すべきか
パントマイムなど要素を外してこそわかるもの
「語り」が誘う逢えない恋の物語
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