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「待つこと」再び

2020-11-14
「待ち時間長きもよけれ日の出待ち月の出を待ち永遠を待つ」
(伊藤一彦『待ち時間』より)
「待つこと」ができない世の中で

夜になってスマホのSNSを通じて、大学学部の先輩の訃報が届いた。「万葉集研究会」にあって顧問であるい指導教授を囲み、たくさん酒を酌み交わした楽しい思い出ばかりがある先輩である。日頃から声が大きく酒に酔うと破天荒な行動となることが多かったが、その勢いと文学への愛情こそがこの大学学部で学ぶ価値ではないかとさえ思っていた。いずれの折にも印象深い言動が多く、その大きなかすれ気味の声が今でも聞こえる気がする。本来であればまた酒を酌み交わす機会を「待ち」たいところであったが、誠に無念な報せにしばし絶句してしまった。我々は日々において、予想もしないことを「待ち」ながらこの世に生きているのである。

附属図書館「ライブラリーラジオ」の第3回を収録した。冒頭に掲げた伊藤一彦先生の歌を「今日の短歌」のコーナーで取り上げて語った。何事も「待てない」社会風潮の中で「待ち時間長きもよけれ」と詠い、慌ただしい世の変転に流されぬよう諭してくれる。「永遠を待つ」ということを悟るとき、我々は生も死も超えた普遍性の中に存在する境地を想像したりもする。図書館内にある「アメリカンインフォメーションデスク」の紹介もしたが、今は「留学のための助走」はしておきつつ「留学」そのものは「待つ」しかない情勢だ。思考を沈着させるために「待つ」ことを、昨今の教育ではあまり重んじなくなってしまった。「分かりやすい」即時即答には物事の芯が抜けている場合が多いことを、十分に見抜くべきであろう。

今朝も日の出を待つ
明るさが見えることを幸せといふ
「生きるということ」はあらゆることを「待つ」ことでもある。


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