汚い手口を暴く当事者意識ゆえ
2020-08-24
組織内の暗躍する黒幕さらには政治的権力の私物化
それを暴き仕事に誇りあるプロ意識
日曜劇場「半沢直樹」が毎回のように高視聴率を更新し、Web上で多くの話題が飛び交うという社会的現象になりつつある。7年前の前回シリーズ最終回が驚異的な視聴率となり「倍返し」が社会的な流行語になったことが、冷めやらずの人気ぶりだ。既にWeb上で指摘されているようだが、社会の悪を退治する「勧善懲悪」な展開が「時代劇」に通じ、「水戸黄門」を始めとする痛快な展開に年代層を超えて人気の要素があるのだと云う。「悪者退治」の見せ場である殺陣はもちろんないのだが、壮絶な舌戦や現代社会の時間的な緊迫感をうまく演出することで「チャンバラ」同様の激しい「鍔迫り合い」や「格闘」がドラマに仕組まれている。また「伝家の宝刀」である「三葉葵」の「印籠」があるわけではなく、半沢自身が敵を撃退する確固たる「証拠」を翳してひれ伏せさせるという構図が、いっときは窮地ではないのかと思わせるところから大逆転する急転に酔わせる要素があるのだろう。
多くの視聴者が「社会悪」に対して「正義」で「倍返し」したい、という意識が高いであろうことも窺える。「水戸黄門」はもとより、権力と金にまみれた政治家や豪商が暗躍して手を組み、社会的弱者である農民などを苦しめることで私腹を肥やすという構造がある。それを「徳川幕府」という時代的政治的権力を善用することで、社会の大掃除をしていくという図式になる。「半沢」が大きく違うのは、主人公が「一介の銀行員」で組織内権力で如何様にも処遇される弱い立場にありながら、「勧善懲悪」をやり遂げる点である。現実の組織内などで「エビデンス」などという外来語が無為に横行しているが、人間同士の信頼で繋がった輪を信じ、情報戦を勝ち抜くことでその回ごとに「半沢印籠」たる「証拠」が築かれていく。組織内や政治的権力者らの悪辣な所業は「いつかは暴かれる」という、一介の社員・国民としての当事者意識が視聴者の中にドラマを虚構だとは理解しつつ、精神的に「立ち向かう」という正義感に火を点ける構造に多くの人が心を踊らせるのであろう。こうした意味で、「変身」は地球上で「3分間」しか使えない「ウルトラマン」の隠れた英雄要素も満たしてくれるのが「半沢直樹」なのかもしれない。
歌舞伎役者と舞台出身俳優の熱い演技
「こういう奴はいそうだ」と思わせる悪役の巧みな設定
現実の社会悪も「一介の市民」によって暴かれることを願う視聴率なのだろう。
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