重ね踏まえて己の創作とすー「紺碧の空」再び
2020-05-20
シューベルト交響曲第8番ハ長調確かに聞いてみれば随所に重ねが
短歌を踏まえた「ラジオドラマ」課題も面白い
今週は朝の連続テレビ小説「エール」で「紺碧の空」の制作秘話が演じられており、日々この話題を小欄に記している。朝の放映終了直後の番組で近江友里恵アナウンサー(僕が宮崎に来た頃は熊本・福岡放送局にいて親しみがある)も、この曲が大好きで1年生の際は応援部に入部したことをコメントしていたと云う。母校の卒業生にとっては「心のふるさと」を実感する奮起を促す名曲なのである。連続テレビ小説の記事をSNSに投稿すると母校の和歌研究者である先輩が、台詞から解釈して「紺碧の空」は「シューベルト」が踏まえらているとわかって大いに勉強になったと僕にコメントして来た。冒頭に記した映像をYouTubeに挙げてもくれていたので聞くと、確かに似ているところが随所にある。明治・大正・昭和の歴史の中で、西洋芸術をいかに日本化して取り込むかは大きな文化的課題であったはずだが、このように「重ねる」「踏まえる」というような「本歌取り」にも似た構造が音楽の上でも為されているのは、和歌短歌を考える上でも大変に興味深い洞察であった。
俗に「パクり」という語で否定的に表現されることが多いのだが、文学・芸術などは何かを必ず「継承」しているわけであり、「重ねる」文化によって郷愁を帯びた心をくすぐる新たな創作となって起ち現れるものだ。元来から日本文学は漢籍に由来することは必定、文字からして大陸伝播の漢字をひらがな・カタカナを「重ねて」創作(草書体などへの文字形変換)して「文字」として使用している。現況の社会事情で遠隔講義で実施している学士力発展科目「日本の恋歌ー和歌短歌と歌謡曲」では、受講者が驚くほど多くなってしまい、資料と講義音声を配信し課題やチェットコメントで意見交流を図っている。(双方向会議システムなどでの講義は不可能)その課題として「短歌一首を踏まえたラジオドラマ創作」を発案した。この日は最初の回で提出された作品から5篇を選び、僕がラジオDJのように朗読した音声を配信した。三十一文字の短歌はそれぞれの抒情性や描写性を活かして、なかなか読み応えのある創作となっていた。もちろん秀作に選ばれたら評価はプラス。学生たちにはラジオで投稿が読まれるような期待感の中で、楽しく短歌を学んで欲しいと思う。
「重ねる」「踏まえる」文化を楽しむ
言葉にならない、ではなく思考を言語化してこそ「学士力」
ジャンルを問わず文化を読み解くヒントは至る所にあるものだ。
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