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顔を思い浮かべて読む聞く

2020-05-14
遠隔講義での課題文書
学生の個々の顔を思い浮かべて読む
尊敬する師よりの電話なら語る顔を思い浮かべて聞く

遠隔講義で求めた課題、特に国語専門科目については個々にコメントを付して再びWeb上の遠隔共有システムに添付して返却をする。Wordファイルにて共有するためにコメント挿入機能が使用できて、手書きよりも入念にコメントしてしまう。だが、PCソフトの機能のみならず、学生たちの文章の内容に触発されて対話的にコメントが増量して来ている自己の作用にも気づいた。昨年度の講義で顔を合わせていた学生たちなら、なおさら個々の顔と意見の特長が一致してきて、あらためて彼らとともに豊かな対話がしたいという気持ちが頭を擡げた。現在のコロナ禍について文学(古典・物語)との関連で述べる課題項目に何人かの学生がカミュの『ペスト』を読んだ所感を記していて、人間と社会の不条理について書いていたことにも嬉しい期待を抱いた。

課題のための課題という範疇に陥らず国語専攻の学生たちの文章は、実に情報の受信者である僕に対してメッセージ性に富むものであった。書簡などを読む際は当然であるが、文書を読む際に相手の顔が思い浮かべられるか否かは相互伝達性の上で実に大きな違いがある。これほど電子メールやLINEなどのSNSが普及した社会に至り、親しい仲でも文字だけの断片的な伝達が中心となり、画面上のアイコンを見ても仮想の「顔」のみしかない。この状況下で学生たちが個々の意見を〈教室〉で語っているかのように課題文書を読むことに大きな意義を感じる。昼休みに至り、尊敬する師よりお電話をいただいた。その常に温厚な語り口に、研究室の周囲の景色よりも先生が語る顔が眼前に立ち現れて来た。さながらICT遠隔テレビ電話を、人間の想像力で脳裏に創ってしまうかのようだった。文学に向き合い嗜んで来た人間にとって、AIなど最先端機器を超える想像力が武器になる、などとも考える昼のひと時であった。

文豪や歌人の手紙には同じような作用が
「人」が「人」に届ける思いを込めた文書のあたたかさ
現代に生きる学生たちに伝えていきたいこと。


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