変わりつつ変わらないしたたかさ
2020-04-14
「細胞を基本単位とした生命活動」生き抜くための確かな強さがある
ウィルスもまた生命との中間的存在として
我々の身体を構成する細胞とはいかなるものか?などとこの時局に及び考えたりもする。世界的細胞学の業績があり歌人としても著名な永田和宏さんの『知の体力』(2018新潮新書)には、敢えて二足の草鞋を履いて双方で高い業績を上げてきた人生の歩み方が多様な角度で綴られている。僕自身はもちろん理系の学問には明るくないが、高校時代に唯一成績もよく好きだった理科の科目が「生物」であった。最初の中間試験で部活に夢中で勉学を疎かにして「生物が赤点」であったことから、奮起して勉強した結果その面白さに目を開き、その後の試験はすべて満点近い成績だったと記憶する。なぜ好きになったかを考えると、「細胞や遺伝」の学びには「物語」が読み取れて実に文学的ではないかと思ったからである。前述の永田さんのご著書にも、本日の標題とした「変わりつつ変わらない」のが「細胞を基本単位とした生命活動」なのだとあって歌人としての明快な文章において実に納得した。
あらゆることが「判らない」新型コロナウィルスについても、少しずつその実態に関する研究報告が為されている。遺伝子配列から「中国由来」と「欧州由来」があり、発生や流行の経緯によって変異しているとのこと。「ヒトからヒト」への感染を繰り返すことで、「耐性」が強化され生き延びるしたたかさを身につけているような報告があるようだ。その感染力を保つ「寿命」は、〈空気中=3時間〉〈銅表面=4時間〉〈ボール紙表面=24時間〉〈ステンレス表面・プラスチック表面=2〜3日〉であると、米国立アレルギー感染症研究所の研究者の報告の記事を読んだ。誠にヒトの生活に適応してその環境のあり方を存分に活用し、少しでも長く生き延びようとするウィルスの性質が読み取れる。高校の「生物」では「恒常性」という語で学ぶものだが、「抗原抗体反応」などを繰り返しつつ、適応して「変わりつつ(反応・変異)」「変わらない(恒常)」のである。特に今回の「新型コロナ」は、実にしたたかな耐性変異を繰り返しているらしい。癌細胞を考えてもそうであるが(もちろん細菌とは違うのだろうが)、ヒトそのものが生きていくための「基本単位」に欠かせない作用がヒトを苦しめるという矛盾と不条理の物語が、そこにあるのではないだろうか。
この記事内容は聞き齧りゆえにぜひ鵜呑みにせぬよう
永田和宏さんの知的活動を考えるに細胞学と短歌の高度な両立
ヒトが何よりも変異を繰り返してしたたかな存在ゆえ、この難局も克服するだろう。
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