スラック(余剰資源)が生きてくるのだが
2020-04-12
「Slack 1〈ロープ・針金・ねじ・ベルト・結び目などが〉緩んだ、緩い、たるんだ2(・・が)不注意な、いいかげんな、怠慢な、だらけた
3 のろい、遅い、ぐずぐずした」(『ランダムハウス英和大辞典』より)
自家用車の半年点検整備の時期となった。いつものディーラーへと赴き、待機時間にも極力人との接触は避けながら約1時間の点検や補充をしてもらう。その都度、車の価値やあり方について再考する機会ともなる。日常的な運転をしていて忘れてしまうことであるが、ハンドルやブレーキのいわゆる「あそび」こそが安全で円滑な運転を支えている。ハンドル動かしたなりに左右に曲がる車とか、ブレーキが極端に効いてしまう車は追突の可能性や高速走行において恐ろしい動きが容易に想像される。ハンドルを動かしても、ブレーキを少し踏んでも、「動作が伝わらない」部分があることで、僕たちは予防的判断や行動を微細な線上で実行できている。その効用は自動車教習所の講義で、大抵は説かれることだろう。過剰な緩みやいいかげんなものにならない「スラック」こそが、交通事故を予防する大きな構造上の作用であることを再確認すべきであろう。
内田樹氏はTwitter上で「『スラック』のあるシステムは危機耐性が強い」ということが「パンデミック」によって「わかった」という趣旨を投稿していた。21世紀となってから「対費用効果」とか「余剰削減」が声高らかに喧伝され、世界の様々な「システム」から「スラック」が削られ続けてきた。感染が拡大した諸国で「医療崩壊」ととなるのは、「平常時」に合わせた削減が断行され、「危機的状況」への投資を削減していた可能性が拭えない。医療現場の最前線も研究現場でも、あくまで「最悪の事態」を想定して資源を構築しているか否かが、このような事態になって可視化されているということだろう。昨晩もNHKで「クラスター対策」の最前線で奮闘する研究者たちの現場に密着したドキュメンタリーを観たが、昼夜を問わず情報の収集・分析・計算など、彼らの奮闘ぶりには深い敬意を抱いた。だがさらに各地方にも、こうした専門の研究者が配属され各地域の「クラスター」に対応すれば、中央の疲弊も防ぐと同時に各地域を護り抜くことができるのではないかと痛感した。各県1校はある「国立大学」は、まさにこんな事態のために設置されていたのではないのか。残念ながら「余剰削減」が促進してきた「国立大学法人」においても、この難局において地域をできる得る限り護り抜く使命があることを自覚しつつ、歩もうとは思うのであるが。
「無駄」は危機的状況で作用する
難局を乗り越えるために
施策してしまった愚策を乗り越えつつ危機に向き合う最前線がある。
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