何を祈らむ雛祭り
2020-03-04
五節句のひとつ「上巳の日」(三月初めの巳の日)
禊をして不祥を払うという根本に立ち返り
様々な会議が続く中、一息つける昼食の時間は貴重である。この日は妻がちらし寿司を弁当として作ってくれて、その酢飯の味に懐かしさを覚え大変に癒された。現実社会の喧騒と大学における対応でやや錯綜した日々の時間を過ごしているが、ふと雛祭りであることに心が和んだひと時であった。冒頭に記したように元来は古代中国から伝来した五節句のひとつであり、「不祥を払う」という生活上の願いが込められている。「重三」(三月三日)とも呼ばれ、日本の平安朝においては貴族の行事として川辺に出て祓えを行い宴を張る、いわゆる「曲水の宴」が行われた。考えてみれば空気の通りのよい水の綺麗な場所に出て、邪気を払ったということであろう。雛人形を飾り婦女子の節句となるのは、室町時代以降であるらしい。
仕事を終えていつも利用するケーキ店に車を走らせた。店の前には何台かの駐車スペースがあるが、そこに警備員まで配置され7〜8台もの車が停車していた。市中で人が集まる場所が忌避される世情にあって、この賑わいはなんだろうと思いつつ入店した。ショーケースには雛祭り仕様のケーキが並び、次々と購入する人たちが絶えない状況。この夜は今月誕生日を迎える姪っ子が来るというので、雛祭り仕様に重ねて誕生日プレートにメッセージも刻んでもらい大き目のケーキを購入した。僕の自宅から車で1時間半ほどの地で、イルカのトレーナーをしている姪っ子からは、仕事への取り組み姿勢などで様々に学ぶことも多い。しばし世間のコロナ喧騒を逃れて、父母とともに近所の焼肉店で英気を養う時間を過ごした。まさに「不祥を祓うひと時」として、雛祭りケーキに載ったお内裏様とお雛様が僕ら家族を護ってくれるかのような思いに至った。
健康や幸せが当然と思い込む世の中を再考する
〈「不祥」=「不吉」「災難」〉を祓うこと
節句ごとに祈っていた古代の人々の心の尊さ。
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