「望み灯して」歌会始の儀
2020-01-18
「観覧車ゆふべの空をめぐりをりこれからかなふ望み灯して」(本年歌会始の儀・召人・栗木京子さんの歌より)
「題」は「望」。
仕事で中継を観ることはできなかったが、16日に皇居で「歌会始儀」が催された。題は「望」で皇后雅子さまは17年ぶりの出席ということで「災ひより立ち上がらむとする人に若きらの力希望もたらす」という歌を詠まれた。令和初の儀において、昨年来の台風などの災害の被災者に寄り添う歌で、特に「若きらの力」に注目され国民への慈愛が感じられた。天皇陛下も「学舎にひびかふ子らの弾む声さやけくあれとひたすら望む」とやはり「子らの弾む声」と次世代を大切にされる歌を詠んだ点で、仲睦まじいご夫妻の関係も垣間見られた。「望」は「若きら」と「子ら」にあり、国の未来は彼らのものであるはずだ。
さて今回の「召人(めしうど)」のうちに栗木京子さんがいらした。栗木さんは牧水賞選考委員でもあり、毎年の授賞式を始め様々な機会でお会いすることも多く親しいゆえにその歌に興味を覚えた。中学校教科書に掲載されてあまりにも著名で人気な「観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日われには一生」自らの歌を本歌として、「想ひ出」ではなく「これからかなふ」未来への希望を詠んだ。歌人としての栗木さんご本人の人生も「観覧車」のごとく投影されているようで、「ゆうべ」は暮れるがまた朝が来る「望みを灯して」という人生の円環を感じさせてくれる。来月には牧水賞授賞式でお会いできるので、この歌についてお聞きしたいと思っている。
「望」は「若きら」と「子ら」
教育学部はいつも彼らに寄り添う
国を挙げて「望」の叶う年でありたい。
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