牧水研究会総会・研究会ー国をつなぐ明日へつなぐ
2019-12-30
研究会の今後へつなぐ「若山牧水と朝鮮」吉川宏志氏の講話
風俗よりも自然を愛した牧水らしさとは・・・
年1回開催される「牧水研究会」総会へ出席、今期の活動の総括と次年度への展望が様々に議論された。歌人個別の研究会と発行する研究雑誌があるのも、この『牧水研究』と『信綱研究』ぐらいであるようで貴重な近代歌人の研究会である。総会では雑誌を発行する上での編集のことや予算のことなど、会を今後も永く継続していく上で重要な案件が議論された。何事も創り出すとともに次へつなぐということは誠に重要なことであり、世代を継承する大切さをあらためて自覚する機会となった。会には京都から出身地・宮崎への帰省の足で吉川宏志さんも参加し、後半は講話をいただく機会となった。
『短歌研究』(短歌研究社)1月号では、吉川さんは内田樹さんと「いま発するべき声、歌うべき歌」として「韓国と短歌」の対談を行ない掲載されている。その基礎資料をもとに「若山牧水と朝鮮」と題して今回は講話をいただいた。牧水は逝去する1年前の昭和2年、主に短歌揮毫を目的として朝鮮半島を妻・喜志子らとともに訪れているが、途中体調を崩し(腹痛など)その後の命に大きく影響したと言われている。訪問の際も牧水らしく自然の美しさを存分に短歌に表現し、中には即詠した歌を朗詠しながら馬で道中を行くというような経験もしたらしい。随想には当時の生々しい世態風俗が描写されているが、短歌には自然への愛情を詠んだものがほとんどであると云う。また牧水と同年齢の石川啄木の「地図の上朝鮮國にくろぐろと墨をぬりつつ秋風を聴く」が、唯一短歌で「日韓併合」を詠んだ唯一のものではないかと云う話題も。近代の歴史・社会の中で歌人たちはいかに生きたかが、痛切に感じられる講話であった。
「幾百万声集まらば原発の終てなむ国ぞ稼働決まりぬ」(吉川宏志『石蓮花』より)
牧水の本歌取りとして先鋭な社会詠も
牧水研究会を明日へつなぐ旅の途中
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