現代版『日向日記』ー航海実習日誌を素材に短歌
2019-12-12
日記に歌とえいば『土佐日記』海洋高校の生徒たちの航海実習日誌
他の高校生では体験できない生の声を短歌に
廊下では大きな声で「ちわっ!」の挨拶、授業開始時の「気をつけ」の後も「しあすっ!」と威勢のよい声が教室にこだまする。思わず僕自身の初任の頃の教室の光景が再現されたかのようで、実に懐かしい感情が蘇った。この日は、県立海洋高等学校の国語の授業を参観した。それも県の派遣研修で半期ほど当該校の先生が大学にいらしており、僕の講義なども受講していることの縁によるものだ。この学校でしかできない実践、宮崎でやるべき実践を求めて授業づくりをされた結果、冒頭に記したように航海日誌を生かすという実利的な実践を考案された。「日誌」を単なる記録に終わらせない、そこにある「経験」を三十一文字に仕立てていくことで、学習者の高校生も僕ら参観者にも多くの発見があった。
授業そのものは「歌会」の構造を高校生らでも順応できるよう、ワークシートや活動方法が明示された。班活動の中に「選歌」や「優れた点を評する」という言語活動を盛り込み、全体で各班1首ずつの歌を全体共有し、最後に当該歌の作者がその創作動機や状況を語るというもの。まさに「主体的対話的な深い学び」を実現する授業として、有効に機能していたように思われる。高校生らの創作した歌は素朴で屈託なく、航海でしか触れることのできない海の光景や航海作業の専門用語なども入ることで「素材」の面で豊かな歌となっていた。中には寄港先のハワイ滞在時に見聞した「ホームレス」の行動を描写した1首もあり、社会的テーマとして考えさせられる歌もあった。まさに『土佐日記』ならぬ、日向の高校生らの歌を綴る航海記。生の航海経験を三十一文字が魔法の杖となって、ことばの力を存分に感得できる実践であった。
明日の漁業を支える若き心
生徒ら個々を尊重してこそ歌は生きる
実践の歌集冊子ができることを楽しみに待ちたい。
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