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『エッセンシャル牧水』新刊紹介

2019-09-25
「何はともあれ飛んだり、跳ねたりする歌を作りたい。」
(「歌話断片」より)他に「自歌自釈」「牧水短歌」
妻・喜志子の愛する夫であり師への深い愛情が・・・

17日開催の「牧水祭」の前週13日に、伊藤一彦先生から「まだ数冊した手元にないのだが」と云うお断りを含み『エッセンシャル牧水』(田畑書店・2019年9月10日刊)をお送りいただいた。文庫本サイズながらハードな薄青い表紙に素朴なイラスト、帯には渓谷のせせらぎの写真が薄くアレンジされ、「すべてのクリエイターに捧ぐ! なぜ、いま牧水? それはまっすぐだから」と緑の草木や瀬の水の流れを背景にバランスよく帯文が並ぶ。この芸術書とも思えるような装幀は手元に常に備えておきたい牧水のエッセンシャル(本質的なさま)が凝縮されている。何より表紙のデザインそのものが、「牧水祭」対談で語りたかった渓谷の瀬の音をイメージしていたことにも驚いたが、冒頭に記した「歌話断片」の一節はまさに対談テーマの「力動」を牧水自身が語っていたことの証でもあった。(対談で紹介)

「牧水歌話」や「短歌作法」は何度か僕も全集で読んでいるが、そこからまさに「本質」を抜粋したのは誰か?それは牧水を心から愛した妻・喜志子である。同書は伊藤一彦先生が長めの解説をお書きであるがそこに示されるように、昭和3年に牧水が亡くなり雑誌『創作』の編集発行を引き継いだ喜志子が「本来の理念の風化」を危ぶみ「師の牧水の歌論および作品をあらためて読み直すことの必要性」を覚えて自ら選び『創作』に掲載したものである。妻・喜志子は、往々にして牧水の人生で激烈な恋をした園田小枝子と単純に比較されがちであるが、元来から信州・塩尻出身の歌人で、東京では親戚である牧水が先輩歌人として慕う太田水穂の家に身を寄せていた際に出逢っている。伊藤一彦先生とは折をみてよくお話しするのだが、喜志子にさらに大きな脚光を浴びせてもよいのではないかと思う。没後91年にしてこうした書籍の刊行があるように、牧水への注目が健在なのは、明らかにその死後に「牧水の歌徳」を世間に広めた喜志子と弟子の大悟法利雄の存在なくしてはあり得ない。昭和43年まで生きた喜志子の短歌観を知る上でも、『創作』がその後の激動の短歌史の波の中で生き抜いてきたことを思うと、誠に深い喜志子の愛情を読み取ることができるのである。牧水・喜志子の愛の共作を、牧水ファンならずとも手元に置いていただきたい。

牧水の魅力と歌作りの秘密
生家の脇の夫婦歌碑にある喜志子の愛の「ひびき」の歌
あらゆることにまっすぐな牧水を、宮崎でこそさらに顕彰していかねばなるまい。


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