「ゆたかなる心となりて」親族団欒の宵
2019-09-23
「あめつちに独り生きたるゆたかなる心となりて挙ぐるさかづき」(牧水)ひとり酒もよし、多勢で飲む酒もまた格別
家族団欒の酒宴は楽し
『牧水酒の歌』を読む限り、独りかなしくのむ酒だろうという場面の歌が多い。とりわけ秋の夜には「酒は静かにのむべかりけれ」の名歌のように、酒を唯一の友として自らの心と語り合う態度こそを好んでいたようである。短歌を創る以上自分自身に向き合うことは必須であり、かなしさの自覚こそが短歌を創らせると言っても過言ではあるまい。冒頭に掲げた歌もまた、この広い「天地(あめつち)」に「独り生きる」自らの存在に向き合ってこそ「ゆたかなる心」となり「挙ぐるさかづき」と結句で着地する。歌では自我の知覚が先なのかと思わされるが、比較的若い頃の牧水の歌であり、やはり「挙ぐるさかづき」という機会があってこそ、「ゆたかなる心」に至るという円環性を考えて読むべきと思う。酒は誠に心おだやかに、ゆたかにしてくれるものである。
台風17号が、沖縄から九州の西側を北上した。宮崎県内でも大雨による冠水や、延岡市では竜巻も発生し大きな被害も出たとの報道。ゼミの卒業生が延岡で小学校教員をやっており、竜巻の被害を受けた町名に小学校があるため心配になって連絡した。するとやはり小学校のガラスが割れるという被害に遭ったと云う。台風の進路が心配されたが、夕刻から妻の実家へ伺い、妻の姉ご家族とともに楽しい宴の時間となった。今回は宮崎に引っ越してきた僕の両親も含めて、多勢での宵がたり。日南ご当地自慢の刺身は美味しく、さらにはお母様の豪華で多種多様な料理はどれも誠に美味しく自ずと酒が進んだ。「ゆたかなる心」と云うのは、このような時間のことも指すのであろう。宴の話題では、この「天地」で生きる上での様々な縁のことに及び、親族のつながりの大切さをあらためて考えさせられた。
台風のような自然に曝される人ひとり
親族が集って個々の弱さを助け合うこころ
「ゆたかなる心となりて挙ぐるさかづき」そして料理に舌鼓
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