痛感・触感・語感ー第339回心の花宮崎歌会
2019-09-08
痛みを転じて身近な食品を通して
違和感を覚える言葉
未だ暑さも残る9月第一土曜日、恒例の心の花宮崎歌会が開催された。出詠歌そのものの小欄への掲載は控えているゆえ、互選票を多く獲得し話題作となった作品の議論について覚書を記しておきたい。頭で作る歌が多い中で、身体の痛覚を表現した作品は眼を引いた。回想のうちなる痛みをそのまま否定的に終わらせることなく、五感を働かせ受け止めてよき思い出に転化するような構造。少年少女の頃の「痛み」には誰しもが共感しつつ、現在ではあまり為されなくなった自然体験に取材したあたりも巧妙であった。
日常生活で誰しもが味わう飲食物に取材し、その販売される容器の辿る道に焦点化した作品も面白かった。その飲み物を擬えた恋の思いが絶妙で、恋心の一面にこんな具象化された行動があるものかと個人的に驚かされた一首であった。近現代社会の消費文化は既に見直され始めているように思うが、「リサイクル」の概念に人間の恋心の切なさが重ね合わされる点は大きな発見であった。
新語・造語の類も巷間に溢れかえっている。手元のWeb有料契約の辞書総合データベース(現代語・流行語も掲載した書籍もデータに入るが)にも掲載されていない神出鬼没な語彙。我々のような短歌人であればこそ、その語感に違和を覚える度合も高い。辞書データベースになくとも、Web上では盛んに検索で頻出する語彙。それは「現代の様々な人間関係を映すもので、その関係性が問われる歌として貴重だ」と伊藤一彦先生の弁。
他にも話題作の多い楽しい宮崎歌会
伊藤先生・俵さんの批評も存分に聞ける
学生たちや卒業したばかりの若い人の読みが加わることも大きな楽しみである。
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