虫はやはり嫌いなのか?テーマ詠「虫」宮崎大学短歌会7月歌会
2019-07-24
手のひら大の蜘蛛とか血液を吸った蚊を打つのは
アリに同情する歌はあったが
東京で育ったせいだけではないだろうが、虫が苦手である。大学時代の同級生で北海道出身の親友がいるが、彼は僕以上に苦手で田舎町出身ながら上手がいたと低レベルの争いに勝ったような気になったこともある。だが宮崎に移住するようになって、次第に虫への免疫力がついた。自宅の中でも大型の蜘蛛や百足、ましてやヤモリまでもが登場したことがあり、何とか僕自身の居住権を主張し彼らを退去させるまでの行動が取れたからである。考えてみれば虫は自らの本能で生きるだけ、近現代の都市生活主義が人間こそがこの地球で万能であるという妄想を振り翳し、彼らを迫害して来たのが歴史的実情のように思う。ホームセンターへ行けば、春先から夏頃にかけて駆除のための製品が所狭しと並ぶ。まだ防虫に止まり、共存を模索する製品は良心的なのかもしれない。
宮崎大学短歌会の7月第2回目の歌会を開催、テーマ詠「虫」。前述のような問題意識を抱いたのは、多くの歌が虫のグロテスクさとか害虫としての人間生活への侵害行為を詠ったものであったことだ。席上でも話題になったが蛍やてんとう虫などのメルヘンなイメージを抱く虫の歌は、8首の中に見ることはできなかった。吸血する蚊を掌で打つ行為、そこで鮮明な血液の露出。ホラー映画的という評もあったが、壁を這い上がる手のひら大の蜘蛛。だいたいにして「蜘蛛」という漢字表記は他の語彙にはほとんど使用されないという限定稀少な漢字への意見なども。家の中に侵入するアリなどは、偵察する役割の連中がいて彼らにゴミ箱などを察知されると次に本体が大群で押し寄せるなどの知識も話題になった。短歌会では教育学部のみならず農学部・工学部・医学部の学生たちもいて、様々な学びの体験を踏まえた評を聞けるのも大変に面白い。開催した国語演習室の網戸には、短歌会を盗み聞きしたいのか多くの宮崎の虫たちが集まっていた。
共生のこころ
自らの傲慢な快適のために彼らを排除していいのか?
二極化分断した社会を憂え、虫たちへの親和的な心が起動する。
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