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「あるだけの力尽して」愛し続ける

2019-05-12
「あるだけの力尽して咲きゐるに力の見えぬうすべにの花」
(伊藤一彦『日の鬼の棲む』より)
本当の強さをもって

みづからにどれほどの力があるか?何をどこまですることができるかなど、簡単にはわかるものではあるまい。先ごろ引退したイチローさんは、幼少の頃から「笑われて来たことが力になった」と回顧する語録がある。少年野球の時に「プロ野球選手になる」と言っては笑われ、入団して「首位打者になる」と言っては笑われ、MLBに行って「殿堂入りや記録更新」を口にして笑われたのだと云う。だが宣言することでみづからを律し、それだけに「力を尽くして」日々を積み上げた結果、「笑った」人のすべてを見返して歩むことができたわけである。MLB選手としては決して大きくない身体は「力の見えぬ」ように見える。だが、それだけにこれ以上なきほどに美しく「咲きゐる」存在感は多くの人を惹きつけたのである。

5月1日に花屋さんで買った芍薬の花が、「うすべに」から「しろ」に変化し次第に花びらを落としつつもその茎は真摯に花芯を正面に向け続けている。普通であればもう捨ててしまうような「凋残」の状態かと思うが、僕はその花がどのように「あるだけの力を尽くす」のか最後まで見届けようと思い、今も居間の空間に置いている。12日間という時間の中にも「花物語」があり、それこそが人生のようにも見えてくる。冒頭に記した伊藤一彦先生の歌もまた、同様な「うすべにの花」を詠んだものだ。具体的に何の花かは明言されていないが、それだけに様々な花に想像を致し読む人によって多様な映像を受け取ることができる。「うすべに」という色も、安易には放つことができない「力」を感じさせる。「花」の命の尊さを意識し、その自然とみづからが同線状で「咲きゐる」ものと自覚する、素朴で崇高な人の心を感じさせる一首である。

宮崎でこそ見える光景
太陽と空と海と・・・
「あるだけの力尽くして」愛し続けたい。


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