21世紀を生きる学生ー「短歌県みやざき」で生きる
2019-01-28
昭和から平成へそして21世紀となって
「子供時代」を振り返るとき
COC+地域定着推進事業における担当講義「短歌県みやざきことばの力と牧水入門」の第2回対面講義を26日(土)午後に実施した。配信講義で若山牧水の歌を学び、動画によってみやざきの短歌活動を体験する、そして対面にて最終的に短歌を一首創作する。この日は、今年度牧水賞受賞者・穂村弘さんの『水中翼船炎上中』の「二十世紀の蝿」(歌集添付の冊子「メモ」によると「昭和の終焉と二十一世紀」)より抄出した10首から選歌して鑑賞を述べるという活動から開始した。昭和の終焉は1989年であるから、1990年代は「20世紀の平成」があった。バブル崩壊後の社会において、様々な社会的矛盾や変質が露見していく時代。僕らは若かりし頃「実態のない過熱景気」を体験し、「水ぶくれ」は「隕石」の落下によって破れ散った。そして「ノストラダムス大予言」や「西暦2000年問題」などを超えて、21世紀へと近づいた。「20世紀の終焉」前後に生まれたのが今の学生たちである。彼らの「子供時代」を回顧して素材を狩ると、どんな歌が詠めるだろうか。そんな穂村さんの歌集の評に寄せるような歌を創る内容は、学生も僕自身もある意味で刺激的であったようだ。
「たまごっち」「洗浄便座」「SNS」様々な新しいツールが日常生活に普及した時代。「放置するとゲームの中で死んでしまう」という感覚。「洗浄」という目的がいつしか過剰に唐突に使用者を「襲う」という捉え方。テレビからWebへのメディア媒介の大きな転換。もの心ついた頃からタブレットを持たされる世代よりは、まだ今の学生たちは前世代となるであろうか。21世紀は便利と引き換えに先の見えない不透明感とオートマチックに勝手に操作されるごとき怖さの中で生きなければならなくなったようにも思う。「命」の尊厳や人間相互の繋がりに不安と翳りが見える時代。単なる人為的な区切りに過ぎない「世紀」だが、まだ「20世紀生まれ」の学生たちには感性豊かな人間性を見ることができる。肝心なのは、こうして短歌の表現を通して世代の回顧をしつつ自らの生きる時代を自覚することではないか。今此処の短歌は、まさに「いま」しか創ることはできない。こんなことを考えさせられる穂村さんの歌集は、やはりとても貴重である。そして僕自身も、生きてきた「その時代」を回顧して、「新しい自分の21世紀」を生きるのである。
ことばで過去の時代を掴む
そして未来に幸せのことばを投げる
「短歌県みやざき」ならではの人間らしい生き方が此処にある。
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