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平成の昇り坂いま此処にあり

2019-01-03
「平成万葉集」
この30年間をことばで振り返る
それは自らにとっての急な昇り坂なのか

NHKBSプレミアムで「平成万葉集」という番組が放映された。SNSとの相性から若者にもブームになっている「短歌」であるが、様々な年代の様々な職業の「よみ人」に焦点を当て、人々の短歌で平成の果ての世相を炙り出すという構成であった。僕自身もお付き合いのある「タクシードライバー歌人」高山邦夫さんが、タクシーを(演技的に)運転しつつ案内役の女優さんを短歌の世界へ誘う演出は、個人的に大変見応えがあった。高山さんの歌の素晴らしさは際立った職業詠であるが、「タクシー」という密室的世相交流箱の中にこそ「時代」の欠片が溢れ出ていることにあらためて気付かされた。いわば、すべての人にすべての人なりの「30年」がある。番組では「平成の流行り言葉」も時系列で紹介されていたが、「あの時の自分」を「言葉」で振り返ることは貴重である。

「教師」という「仕事」を初めてすぐの改元。野球が好きだった僕は、初任校の強豪野球部に何らかを学びたく監督に懇願し冬の合宿に同行していた際に、千葉の銚子で「昭和天皇崩御」の報に触れた。当該野球部は、夏の全国高等学校野球選手権大会「平成初代優勝校」となった。身近に触れる生徒たちが野球で「日本一」になる栄誉を目の当たりにしたした若かりし僕は、様々な人生の方向性にまだ気づいてはいなかった。漠然とした「疑問」と「不安」を抱きつつも、「強い」何かを目指して歩みたいと、「ことば」は具体的で明確ではなかった。あの「平成」の始まりから早30年が経過した。つくづく思うのは、「平成」の果てとなる「いま」にして短歌に携わっていることの幸せである。もちろん「此処」に到達するには、かなり寄り道をし遠回りをした。「教師」から「研究者」になるには、忍耐と強引と柔軟の入り混じった混沌の深い闇のトンネルをくぐり抜けた。そして今は、「平成」最後の「峠」に到り背中に連なる山々を眺めるような思いである。となれば、残された「四ヶ月」は並みの時間ではなく、「平成」を背負った自分の「日常」を映し出すことができるのではないか、などとも考える。

「昇り坂」はまだまだ続く
日々の実感を大切にし自らしか織り成せないことばを
そして「元号」の節目とは何かと考えもする。


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