詩の子恋の子ああもだえの子
2018-10-20
「ああ皐月仏蘭西の野は火の色す
君も雛罌粟われも雛罌粟」
大阪は堺、晶子の生家や利休の屋敷ありき
岡山で開催される中古文学会へ向かう道すがら、大阪に立ち寄った。先週の宮崎で知花くららさん・伊藤一彦先生・俵万智さんのトークがあり、そこで与謝野晶子のことが取り上げられたもので、ぜひ生家や記念館を訪れてみたくなっていた。思い立ったが吉日、伊丹空港から堺へと向かった。記念館に向かう途中に生家跡の歌碑があり「海こひし潮の遠鳴りかぞへつつ少女となりし父母の家」が刻まれている。現在は区画整理で晶子の生家跡は路面電車の走る道路上であると云う。ほど近いところにある記念館は2015年に落成した新しい建物。すぐ前に千利休の屋敷跡があり、堺が生んだ二人の文化的偉人が偲ばれる。記念館も「さかい利晶の杜」と名付けられ、両者を顕彰するための施設として融合している。
晶子記念館のスペースでは、直筆原稿などよりも晶子の生涯を描く展示構成となっていた。もちろん晶子の文学的偉業は多方面に渡るが、もう少し短歌の表現を楽しめる展示が欲しいようにも思えた。もっとも歌人としての生涯に多くの揮毫を遺した牧水の場合、自ずと短歌の墨跡が多く展示される必然があるゆえ、そこが基準となるとこうした思いを抱くのかもしれない。それでもいくつか晶子の「ことば」をあらためて噛み締める機会にはなった。「創造は過去と現在とを材料にしながら新しい未来を発明する能力です。」「自分の見極めた方角に思い切って大胆に足を運ぶと、かえって雑踏の方が自分を避けるようにして、自分の道の開けて行く」「『私は私の自我を堅実にしたい』という自律的な生き方の発見」など、考えさせられることばに向き合った。
「われ男の子意気の子名の子つるぎの子詩の子恋の子ああもだえの子」
(夫である与謝野寛『紫』より)
夕刻より新幹線が遅延で大混乱の中を何とか岡山まで到着した。
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