下支えする力
2018-09-26
身体を支える筋力一首の歌の背景にある膨大な力
一歩下がった力・見えない力
人間の身体が直立していることの方が、不思議なのかもしれない。寝た時の怠惰に浸るような開放感とか、四つん這いになった時の不思議な身体感覚というものが、そんな動物的進化の遺伝子を一部自覚させているであろう。トレーニングや年齢に伴う身体の変化に興味を覚えて、こんなことを考えるようになった。トレーニングすればキツく感じる腹筋背筋という表裏こそが、「コア(核心)」部分として人間を支える。割れているかどうかという見た目の問題以上に、このコアの力には気を遣いたいと思う。表層に見えないもの、まさにそこに核心があるというように。
俵万智さん『牧水の恋』(文藝春秋刊)を読んで、あらためて短歌の背景にある「氷山の海中部分」のような面を探ることに興味を覚えた。だが同時に名歌は、その背景を知り得なくとも自立することができる。万智さんのトークとして「牧水はやはり歌がいい」というのが印象的であったが、短歌とはそういう「核心」のある文藝ということであろう。近々お会いできる歌人・小島ゆかりさんのご著書を読み返していると、こんな一文に目が止まった。「具体の力を借り、観念に流されないで、巧く詠えるところをぐっと我慢して一歩下がった作品。言いたいことを言い切らないで一点の謎を残した作品。」(『短歌入門 今日よりは明日』本阿弥書店2002)をよい短歌とすると云う。これぞまた「下支え」の論理ではないだろうか。
雲の取れた空に見事な十六夜月
青島から日南方面を見ると海面が美しく明るい
人間には見えない世界が海中にあり、僕らはそれに支えられている。
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