隠り沼の下ゆは恋ひむ
2018-08-28
万葉の枕詞音の魅力が韻律を引き立て
ついつい気になる
牧水が歌作の折など習慣にしていた『万葉集』の音読という行為を、日々20首ほどを目標に続けている。今一度『万葉』の音の「響き」を体感したいことと、それによって「やまとうた」としての韻律を身体化したいゆえである。あくまで「音読」することそのものを大切に、素直で敬虔な気持ちで歌に向き合っている。むしろ細かな解釈や精読的な頭を廃し、身体と『万葉』を共鳴させるような時間となる。声を出して読み上げていると、自ずと五音の「枕詞」などに魅せられることが多い。「枕詞」とはまさにこうした意味を半ばかき消した「声」によって、その魅力がわかるものだ。
「隠(こも)り沼(ぬ)の下ゆは恋ひむいちしろく人の知るべく歎きせめやも」(3021)
この日は「隠れ沼の」という枕詞に魅せられた。「隠れ沼」とは「1、堤などで囲まれて水の流れ出ない沼」「2、草木などが茂っている下に隠れて水の見えない沼」(『日本国語大辞典第二版』より)というほどの意味の語彙である。掲げた例歌のように枕詞として使用されると「下」にかかるわけである。もちろん意味として「外から見えないように」といった趣旨を含み込み、恋の状態における心象風景としても作用しないわけではない。「枕詞は訳さない」などと「学校」では教えることになってはいるが、何だか「訳す訳さない」といった問題ではないような気がしてくる。だいたいにして「学校」で為される「現代語訳」はろくなものはない。『万葉』などはとりわけその本質を歪め、無理やり理解しているようにしか思えないのだが。
「短歌は声」
この命題をあれこれ深く考えて見たい
「隠れ沼」の下にもぐるがごとく
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