牧水が引き継いだ古典由来の音楽性
2018-08-11
宮崎日日新聞「没後90年特集」伊藤一彦先生「人も自然も親和的な関係」
「世代を超えて愛される国民的歌人」
宮崎日日新聞8月10日付13面にカラー版記事として「牧水没後90年」特集が掲載された。先週より担当記者の方からのインタビューや記事内容の確認などを繰り返していたが、大変立派な紙面に掲載いただいて誠に光栄至極である。「没後90年記念事業」として行われる9月の一連のイベント案内も同時に掲載され、9月17日の90年目のご命日に向けて、県内の気運を高めるのに一役を買うことができたのも嬉しい。記事の右半分は伊藤一彦先生のインタビュー記事で、「人と自然が親和的な関係をどうつくるか、というのが牧水の世界観、人生観だったと思います。」というくだりが印象的である。現在の社会や世界的情勢を鑑みても、牧水が生きた時代に自らの歌で「あらがうよう」な姿勢を頑なに続けた姿勢を読みとるべきと、大変示唆的な見解が示されている。
近年になって多発する災害についても、「自然との関係は対立ではなく自然によって生かされている」という牧水の観点を指摘する伊藤先生のご発言は、現在の社会に生きる牧水の歌に大きな社会的価値があることを考えさせられる。こうして宮崎日日新聞が、県内出身の国民的歌人を讃えて大きく紙面を費やす信条を示すところにも、「みやざき」という社会の幸福度が高いという一要素が顕れているのだと思われる。同時に牧水出身地の日向市をはじめ、県全体でも市長や知事をはじめとして牧水を理解し愛好が深いということは、県内の人文学研究者として誠にありがたいことだと切に思う。記事にもあるように牧水の生きた明治から大正の時代は、「富国強兵を志向し、自然を開発すべき対象と見る西欧文化が席巻」したわけである。明治150年という節目の今年は、様々に歪曲を繰り返して来た「近現代」を広い視点から見直すべき年ではないのか。それゆえに、牧水が引き継いだ「やまとうた」の古典性を、僕らは奥深くその歌に読むべきなのである。
ゆったりした古典の音楽性
声の文化の豊かな時間性・共感性
今月の牧水短歌甲子園をはじめ、9月のイベントが今から楽しみである。
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