俳句と落語の共通点
2018-06-11
「囲いができたね」「へえ〜」
小咄も余計な情報を極力削ぎ落とすこと・・・
先月も宮崎で独演会を開催した親友の落語家・金原亭馬治師匠が、「NHK俳句」にゲスト出演した。先月の段でも聊かその内容について話してくれてはいたが、実際に放送となりあらためて気付かされた点も多かった。冒頭に記した小咄は、ついつい「〈隣の空地に〉囲いができたね」などと〈 〉部分を入れてしまいがちだ。すると聞いたものは個々の内に、「隣」や「空地」のことを想像してしまい、肝心の「下げ」に集中しない場合があると云う。説明はせずに聞き手・読者の想像に委ねるという点で、俳句と落語には大きな共通点があると云うのだ。また所謂「比喩」に関していえば、何らかの「小道具(アイテム)」に託すというのも共通な方法。著名な「笠碁」という演目では、碁を打つ友人同士が「待った」に関して喧嘩となり、双方が二度と碁は打たないと豪語していたが、相手の家に「煙管入れ」を忘れてしまう。その心は「日常で必ず必要ではないが、なければ淋しくてたまらない」ものという趣旨が、双方の友人の存在と重なり合うのだと云うことだ。
「小道具(アイテム)」一つに「比喩」を込める、このあたりは短歌以上に俳句の読みの上で重要であるということになるだろう。また、講談と落語の違いについても師匠から実演を含めた紹介があった。講談は「よむ」ものでナレーションで話す、落語は「語る」もので登場人物に語らせる、といった違いがある。所謂、場面を説明していくか、それとも劇仕立てで再現するか、といった違いとなると云うわけだ。この点は「描写」を考える上で、大変参考になった。番組後半では馬治師匠自身の俳句「青あをと髪刈り上げて梅雨よ来い」が紹介され、選者の添削が施された。「梅雨よ来い青あをと髪刈り上げて」と結句を初句にに上げるだけで、大変引き締まった句になるものだ。これは短歌においても上の句と下の句を反転させる推敲が有効である場合があるのと共通している。選者の添削において、「犬猫と」とすれば作者が句の中に、「犬猫は」とすれば句の外に、といった助詞使用の指摘なども参考になった点である。
短歌ができない時には俳句を読んでみる
日本の短詩系と話芸・落語との交響
馬治師匠が僕に曰く「短歌は落語に出づらいですね」
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