『万葉集』筑紫歌壇の価値
2018-05-19
大伴旅人・山上憶良筑紫(太宰府)歌壇の文雅な行い
九州の大陸交渉要地としての意味も・・・
今年度からの担当講義「国文学史1」では「上中古文学史」を扱っており、いま折しも『万葉集』についてを全4期に分け講じている。その特徴など既存の知識のみならず、代表歌人の歌を読みながら考える形式を採っているが、あらためて自らが『万葉集』から学ぶことも多い。また学生たちの多くが七五調が身体化するほど染み込んでいるゆえ、五七調の韻律を体感させていくことにも大きな意義があるように思う。長歌(五七・五七・・・・・七)を音読することや、現代語訳も使用して交互に音読するなど、体感する「文学史」に仕立てていくことが、僕の一番オリジナルな講義となると考えるゆえである。
さて『万葉集』第三期、奈良朝の歌人である山部赤人・大伴旅人・山上憶良・高橋虫麻呂などの歌は、それぞれに深く読み応えがある。赤人の歌の、柿本人麻呂の継承性と的確な「写生」、中国六朝叙景詩の影響の指摘もあり対句的な構成なども見逃せない。そしてやはり九州の大学で身近な存在として考えたいのは、筑紫歌壇を太宰府で形成した旅人・憶良の存在である。大陸(中国)的素材として、「竹林の七賢」や「王羲之の宴」などをモチーフにしながら、自らの「文雅」な行いを叶えているのは、誠に北九州の地理的条件に存在した意味も大きいだろう。また牧水を考えたときに、その『万葉集』の愛読は様々な資料が物語るのだが、韻律はもとよりその発想的な影響を論じた評論はまだ少ない。この日も、旅人の「讃酒歌」を学生と読んでみたが、どうもまだ大学1年生ではピンとこないらしい。だがその酒を讃え呑まない者を揶揄するような発想は、牧水に通じる点が多々あるように思われる。
九州に住んだ意味を
あらためて自らの文学研究に繋げること
太宰府や福岡までは高速道路を行けばひとっ飛びなのである。
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