人はあなたか多くの人かー歌物語を楽しむ
2018-05-08
「人知れぬ我が通ひ路の関守は宵々ごとにうちも寝ななむ」(『古今集』632・恋3、『伊勢物語』第5段)
歌の効用、歌徳あり
GW開けの「国文学講義」、1週間空いたが『伊勢物語』二条后章段を読み進めている。前の第4段の「月やあらぬ春やむかしの春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして」など、特に『古今集』に採録された名歌は、物語内容を踏まえて声に出して読めるようにしておくのがよいと、まずは冒頭に説く。古典の場合は特に、年齢を問わず身体による享受機会を多く設けるべきであると思っている。その声に出して読んでこその味わい、他者に伝えようとすることばの迫力、近現代が忘れてしまった音声化そのものへの意識を再考すべきであろう。もちろん音声化すればいいという訳ではなく、その内容や解釈に関連づけて音読する習慣が望まれる。特に解釈が多様である場合などは尚更である。
冒頭に掲げた『伊勢』第5段所載歌、「人は誰を指すか?」という問いを出しつつ、3人一組で解釈と批評を考えさせた。古来から「人」を「二条后」とするか、「世間の人」とするかと解釈が分かれている歌である。また「人知れぬ」が「我が通ひ路の」にかかるのか、「関守」までかかるのかによって、やはり解釈が変わってくる歌である。前段の「月やあらぬ」の歌もそうであるが、『古今集』仮名序による業平評「その心あまりて、言葉たらず」の典型のような歌と考えてよいだろう。受講者全体で6班からそれぞれの解釈が出されたが、物語本文と関連づけてこの歌の置かれた場面・状況を含めた解釈を提起した班もあって、少しづつではあるが歌物語の面白さ楽しさに気づき始めていることが感じられる。
自ら読み解きたいと思う意欲
恋のあり方を歌物語に学ぶ
まず教員志望者に古典好きを増やすことも肝要である。
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