いま宮崎でこそ学ぶ文学を
2018-04-28
近現代文学史を飾る若山牧水・俵万智の短歌古代文学史に厳然と立つ日向神話
いまこの大学でこそ学ぶ文学を講じよう
3年前に新学部制度(教育文化学部→教育学部)となってから初めて、1年次大学教育支援教員となり「大学教育入門セミナー」を担当している。人文系の3専攻(国語・社会・英語)の学生たちを対象に、大学での思考法や学びの段取りを学ぶ内容を展開する基礎教育科目である。ここ2回ほどは「国語からのアプローチ」ということで、僕が講義の進行を行なった。今回は文学理論を語る際には有名な、「瓶の中に水がまだ半分も入っている。」「瓶の中に水がもう半分しかない。」の差を考えてもらい、助詞一つの使用にもこだわってものを読むことの大切さを説いた。もとより実物のペットショップに水を入れて持参し、これを自分なりに表現せよと問いかけ、個々人で多様な表現を引き出した後の展開である。大学受験で「答えは一つ」に固まってしまっている脳をまずは解きほぐさなければなるまい。
その後は助詞の読み方一つにこだわって表現や理解する最たる例が「短歌」であるとして、牧水や俵万智さんの短歌を紹介していった。牧水が宮崎の地を詠んだ歌を中心に五七調の力動性も体感してもらった。万智さんの短歌は高校教員をされていた時代のものを取り上げて、教員たるや何が必要かを考えられるようにした。全国に大学は数多くあれど、牧水と俵万智を学ぶのにこれほどありがたい環境にあるのは本学が日本一と言えるであろう。「入門セミナー」でこれを啓発できるのは誠に大きいことだ。授業後のレビューにも「(二人の)歌集(短歌)を読みたくなった」といった趣旨のものも多く、まずは文学好き短歌好きの学生を育てる目標に適った内容となった。さらに国語専攻1年生科目「国文学史1」では「神話」がテーマであったが、もちろん「日向神話」を具体的な題材として、「神話とはなぜ存在したか?」ということを考える内容とした。「海幸山幸」の神話の舞台である青島が遠方に見えるキャンパスで、それを講じるのもまさに日本でここだけである。民間に伝承された神話の意義とともに、政治的に作られた〈神話〉としてのあり方。僕自身の学部同期である優秀な古事記研究者の考え方を紹介しながら、南九州と大和王権との問題なども考えてみた。
教育にこそ人文学が必要だ
短歌と神話はみやざきの誇りではないか
「地域・地方」という掛け声があるのなら、そこから文学を興しましょう。
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