あくがれを愛する会ー日向の宵に
2018-03-20
牧水歌から命名「あくがれ」厳しい現実社会はいつの時代も
それゆえに前向きに今いる在処から離れる生き方
東京から宮崎に帰り息もつかずに、午後からは日向市へと赴いた。牧水の故郷・東郷町にある焼酎蔵「あくがれ蒸留所」の銘柄を愛する会に出席するためである。6年ぶりの開催というから、僕が宮崎に赴任してからは初めてということになる。どのような方々がどの程度集うのかと興味があったが、日向市長をはじめ市の商工会議所など要職に就かれている方々から地元出身の演歌歌手まで、多彩な顔ぶれに大変楽しい会となった。乾杯はもちろん「あくがれ」の14度にて、乾杯を麦酒でなく地元の蔵の逸品で行うというのも、酒を愛する一つの定式であろう。料理も牧水の愛した田舎料理で「煮しめ」の味が麗しかった。
「あくがれ」と命名したのは、言うまでもなく牧水研究の第一人者である伊藤一彦先生。この日も冒頭にお三方のご挨拶ののち、「あくがれの心」と題するご講話があった。昨秋の和歌文学会開催のことや大学短歌会が活況となっている現状も話していただき、ありがたい限りであった。
「あくがれ」とは、「今いる在処から離れる」(在処離れ)という根源的な意味があるが、時代とともに意味には聊かの違いが生じた。古典和歌でも和泉式部や西行の用例は著名であるが、「現実逃避」的な負の方向性をもった使用であるというのが伊藤先生のご指摘である。それに対して牧水の場合は、「現実の厳しさを乗り越えよう」という前向きさが読めると云う。「いざ行かむ」という力動的な歌そのものが、若き日の牧水を起動させたと言えそうである。
日向市の街のまとまり
楽しき日向の宵に・・・
牧水先生もさぞ喜んでおられるだろう。
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