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若者たちよ!いざ牧水を語ろうー牧水没後90年企画

2018-02-19
県立図書館・大学附属図書館・牧水研究会 共催
若山牧水記念文学館 後援
牧水没後90年企画

今年は牧水没後90年にあたる。昨年暮れの牧水研究会で、「若者たちが牧水をどう読むか聞きたい」という発案があり、会長の伊藤一彦先生が県立図書館名誉館長であることと、僕が大学附属図書館運営委員であることから、三者の地域連携企画をしようということになりこの日を迎えた。プログラムは冒頭に伊藤一彦先生と僕の30分の対談から。今年の角川短歌新年号の「75人歌人競詠」に与えられた「世界で一番有名な歌」という題を契機に牧水歌の普遍性について語り合った。牧水の著名な「白鳥は哀しからずや・・・」の歌は芥川龍之介の『羅生門』とともに高校の全教科書に掲載されている「有名な歌」と伊藤先生が角川に記したコメント。この『角川短歌』には他にも4人の歌人の方々が、「白鳥」の歌を取り上げているのも特筆すべきことであろう。いずれも近現代短歌として牧水歌が新たなる普遍性・愛誦性を抱え込んでいるという点が、その理由ということになろう。先日、牧水賞を受賞された三枝浩樹さんも「精神と純潔、孤独と宥和を未分化のまま抱え込んでいる」と「白鳥」の歌の普遍性に言及している。また牧水歌が人の発する声を元に創られているゆえの愛誦性という点も大きく、文字依存の狭量な視野に陥っている現代の我々に「力動性」を持って警鐘を鳴らす普遍性がある点も評価できる。人生を語るのびやかさ・しなやかさという抒情の構造と関連させ、牧水歌の韻律性という点は今年没後90年を契機に新たに焦点を当てるべき論点であろう。

さてここからが重要で、宮崎大学の学生たち4名を交えての「いざ牧水を語ろう」となった。「牧水と私」という自己紹介に始まり、「牧水と恋」「牧水と故郷」「牧水と色彩」「牧水と作歌」というテーマに沿い約70分の語り合いが続いた。これらのテーマは僕のゼミの学生3名が卒論として扱ったものでもあり、そこに宮崎大学短歌会の学生1名を加えた4名ということである。一つ目のテーマである「牧水の恋」はやはり熱いものがあり、小枝子との情熱的な恋をしていた時の牧水と登壇した学生たちが近い年齢という点も面白い要素となった。この恋に関連した牧水歌には「かなし」「さびし」が含まれる場合が多く、その外在化によって人を突き動かす「何か」を一般化し「自然と人間」との関連を再考させられるのが牧水の歌であるという点が、語り合いの中から浮き彫りになってきた。会場には『文學界』で「牧水の恋」を連載している俵万智さんも市民として参加いただいていたので、急遽サプライズでコメントをいただくことに。「いざ唇を君」や「ああ接吻」という牧水の歌の学生たちの新鮮な読み方に共鳴して、牧水の本質を照らすコメントが重ねられた。また牧水が青春時代を過ごした延岡や、生まれ育った坪谷を詠んだ牧水歌のあり方では、絶ち難く「母」への慕情が関連していること。また色彩に関しては「青」という色の牧水歌における構造・機能のこと。さらには学生たちが作歌する際に、「意味」「感覚」重視となっている現況に対して「韻律」や「歌ことば」の面でも大変有効な示唆を与えてくれるのが牧水歌であることなどが語り合われた。その上で「人間と自然」の親和・融和という大きなテーマを含み込んだ歌が、宮崎の若者たちから生まれることを願い語る会は閉じられた。

第2部は「読書県を目指すための読書活動」
この内容に関しては後日あらためて個々に記したい
「若者たちよ!いざ懇親の宴へ」伊藤一彦先生・俵万智さんを囲み和やかな時が流れた。


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