「染まずただよふ」時空にありたし
2018-02-16
牧水の著名な名歌「染まずただよふ」の普遍性とは何か?
あらゆることにおいてそうありたいと思うとき・・・
先日の宮崎大学短歌会で、牧水歌の「白鳥は・・・」の歌の結句「染まずただよふ」を本歌取りとして使用した歌が出詠され話題をさらった。この結句が当該歌にある学生の日常生活の中の一場面と見事に融合して、様々な読みを許容した。「ただよふ」ものは「におい」と読めたが、旧仮名と新仮名が交じり合う効果もあってか、生活の一場面が実に普遍的なものに読めてくることに参加者が驚いたというのがその状況を一番説明しているだろう。同時にこの牧水歌があまりにも著名なだけに、「空の青海のあを」などの映像が想起されて、何気ない日常の背景になる効果も感じられ、あらためて牧水歌の力の絶大であることを感じる機会でもあった。
「染まずただよふ」生き方とは何か?家族・仕事・友人・組織などなどの所謂「社会」の中で生きている我々は、「ニュートラル」でいられるのはなかなか難しい。ゆえに「我欲」が生じた時、家族でも友人でも諍いになり、仕事でも組織でも迎合や阿ることの繰り返しで、なかなか「染まずただよふ」という境地に居続けることは簡単ではない。孤独を受け容れその痛みに耐えながらも、自らの信条を貫き通す。一見固い孤高な生き方のようではあるが、あくまで「染まずただよふ」のである。淀まず固まらず流れず着かず、誠に微妙な均衡の地点に柔らかくも落ち着いて「ただよふ」ごとき生き方。それを牧水は追い求め続けたのではあるまいか。
生きることの真空が見てくる
18日(日)に開催する宮崎県立図書館・宮崎大学附属図書館・牧水研究会共催
「若者たちよ!いざ牧水を語ろう」の序章として
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