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ある街角の電話ボックスから

2018-01-28

「第二の誕生日」と考えたことがあるか?
新しい人生が始まったその時
ある街角の電話ボックスからの一報で

街中に「電話ボックス」というものも見なくなった。携帯電話などがまったく普及していなかった頃、急な電話をしたい時は街中で「公衆電話」を探したものだ。とりわけあまり人に聞かれたくないような話をする際は、「ボックス」の存在が重宝であった。小さな個室の中には、汚くなった電話帳などが置いてあり、また悪戯書きやシール状の広告宣伝などが貼られているのも特徴であった。新しいタイプのものは防犯上、全体が透明なガラス製になり洗練されたデザインのものになっていた。最近はほとんど見なくなった「電話ボックス」だが、ある街角に今も昔と同じ場所に存在感も輝くように建っている一つがある。その地に行く度に、僕はその存在を確認するようにしている。

その「ある電話ボックス」とは、大学受験の合格発表の結果を母親に一報した電話なのである。当時はネットもなく、合格発表はキャンパス内の掲示板に貼り出されそれを見に行って確認する方式だった。日本でも有数の受験生数の押し寄せる母校の受験は、かなり苛酷なものであった。受験票は早いうちにと受験番号が「2桁」であったため、合格発表を見に行き遠目から掲示板を眺めると、視力のよかった僕は「2桁」の数字がわずか1列にも及ばない数しか掲示されていないのがわかった。果たしてその「僅か」の中に自分の番号はあるのだろうか?恐る恐る近づくと「73」という数字が確かにあった。その数字を人並みに揉まれながら、3度その場から行きつ戻りつして見たものだ。発表場所の近くに仮設の公衆電話が並んでいたが、長蛇の列で使用するにはかなりの時間を要した。そこで合格書類を受け取った僕は、「ある電話ボックス」に向けて一目散に走った。そしてボックス内で大声で母親に電話をしたことを、今でも鮮明に覚えている。

電話の後で両親は手を取り合って喜んだのだと
多くがなくなった中でいまでも存在する「電話ボックス」
僕の第二の誕生日秘話である。


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