ゆっくりに制動をかけ 力動を生むー復権せよ五七調
2017-12-11
五七調で短歌を読む息継ぎも不要でゆっくり読める
七音で制動をかけることで「止まる動く」という力が生じる
珍しく休日に研究室には行かず、自宅で歌集などを読んでいた。様々なことが気になりながらも、やはり韻律の問題に関しては個人的に興味が深い。昨日の小欄で紹介した「COC+地域定着推進事業」の配信型講義でも、牧水歌の五七調の力動性について口頭での説明を試みている。基本的に「五音三拍・七音四拍」と言葉には「拍」があり、その交錯によって短歌の韻律は豊かなものになっている。「五音三拍」には「七音四拍」に比べて「一拍」分が欠けることで「休止」することができ、音読をするとその「休止」で止まるのが流れる韻律を生み出し自然に安定した心地よさをもって読むことができる。俳句はもちろん「初句五音+七音五音」という構成が多いゆえ、必然的に止まりやすい五音で2度止まる七五調が基本となる。その延長上で、川柳や交通標語の調子などが七五調で巷間に流布しやすい。
このような必然的な言葉の韻律の問題を含みこみつつ、『百人一首』カルタ競技において上の句・下の句で分割して間を置き和歌を音読することなどから、一般の方の多くに和歌・短歌を読んでもらうと、上の句までで一旦終始する七五調で音読する場合がほとんどである。教員免許更新講習などの機会によく実験的に何人もの現職の先生方に「白鳥は・・・」の牧水歌を音読してもらうと、十中八九が「空の青」と三句目まで続けて読む。もちろん学校教育の教材として掲載されている多くの近現代詩が、明治時代以降の『新体詩抄』の影響もあって「七五調」であり、詩歌の韻律は”それ”であると染み付いている方々も多い。それだけに五七調の短歌の多い牧水歌によって、”その”韻律の復権を図ってもよいように思われる。一言一言をゆっくり読み、自転車のブレーキを掛けるように「七音」で力を入れて止める、その後再び自転車の初動の時のように力を入れて「五音」から動き始めることを2度繰り返される。最後に結句「七音」が独立してまだ「五音」に続きそうな余韻をもって歌が着地する。「五七調」の力動性はこのように生じている。
『万葉集』長歌の雄大な響き
言葉が力をもって動き出す
「生きている」韻律の歌を創りたいものである。
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