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『百人一首』暗誦を活かすには?

2017-11-30
大学生はどれほど暗誦しているのだろう?
暗誦する意味は何か?
日常語の韻律に敏感になるためにも

1年生のオムニバス講義で、『百人一首』をどれだけ暗誦しているかをまずは個人で書いてもらった。その上で、5人1組の班内で相談してどんな歌を暗誦しているか3首ほど挙げてもらうという活動をした。大半の班は少なくとも1首の和歌を挙げ、10班中3首を挙げられた班は三分の一程度。中には様々な和歌の中にある韻律のよい句、「あしびきの」「ちはやぶる」「うつりにけりな」などを混合して組み合わせて1首に仕立て上げた班もあった。(もちろんこれも許可して、「正解」を求める活動でないことを宣言している)個々の学生には個人差があって、何首も口をついて出て来そうな者もいれば、歴史的仮名遣を間違って読んでしまう学生まで様々だ。こうして1年生に文学的な講義をすると、高校までの「国語教育」の現状が浮き彫りになって、大変興味深い結果となる。

中華人民共和国では小学校段階で暗誦すべき「80篇の詩」が、日本でいう学習指導要領の上で定められていて、6年間でそれを暗誦する教育課程となっている。日本に来ていた留学生に話を聞いたことがあるが、教育熱心な家庭では物心もつかないうちから詩を暗誦させるらしい。しかも暗誦することで詩句を身体的に通しておくと、日常言語の上で役に立つ機会があるという意識を持っているようにも思われた。どこぞの国の政治家が、詭弁的に故事成語で答弁するのとは”基本”から違うような気がする。だが日本でもカルタ競技を題材にしたアニメとその映画化の影響などもあって、「ちはやぶる」などという枕詞の存在感が増し、その韻律に好感を持っている若者は多いように思われる。そこで『百人一首』を「本歌」として、学生の日常を題材にした短歌を創るという活動をこの講義の最後にしてみたが、これはなかなか学生たちも楽しんでいた。これは既に俵万智さんなどが実作に活かしている手法だが、ただ「暗誦せよ」ではなく、こんなところから『百人一首』の存在に興味を持たせる工夫が必要だということだろう。

「浜松町 田町 品川 大井町 大森 蒲田 川﨑 鶴見」
いわゆる「ハナモゲラ和歌」は世の中にいくらでも存在する
「暗誦させる」ではなく、個々の学習者を「主体的表現者」として尊重することである。


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