汝が意志をまぐるなといふが如くに
2017-11-18
「納戸の隅に折から一挺の大鎌あり、汝の意志をまぐるなといふが如くに」
(若山牧水『みなかみ』より)
大学キャンパスは学祭準備に入り休講日。朝から様々な活動に奔走する学生たちの姿を眼にし、作業から発する音が研究室にも聞こえて来て、この時季を感じさせる雰囲気となって来た。そんな中、本日県立宮崎南高等学校を会場に開催される「教師未来セミナー」で使用する資料作成の最終段階を進めていた。この企画は、宮崎大学と県教育委員会・県商工会議所連合会など地域との官民協働による「人財育成」を目標に、年間6回開催されているものである。今年度は既に大学学部から何人かの先生方が、各講座の専門を活かした内容でセミナーを行っている。10月までは学会開催があるゆえにお断りしていたが、このテーマならば自ら話したいという願望もあって、この5回目の担当と相成ったわけである。その資料を作成していると、必然的に自分がどのように教師を志望し大学で学び、現職教員として過ごし、そこでどれほどの生徒たちに出逢って来たかが思い返され、感慨深くなることしばしばであった。
セミナーではやはり「短歌県」を標榜し、教師の心情を表現した短歌を読みながらその魅力を発見する内容構成としてある。さらには郷土の歌人・若山牧水の歌も読んで対話して考えてもらいたいことがある。牧水は現日向市東郷町の生まれであるが、祖父の代から医者の家柄で、当時の村の中では父の医業を継ぐことが期待されていた。旧制延岡中学校(現延岡高等学校)から早稲田大学(文学部)へ進み、文学を志し短歌に没頭する道を歩むことになる。その後は父母との関係も含めて故郷へは、どこか後ろめたい葛藤が牧水の中でも渦巻いていたことが知られている。冒頭に記した歌は、牧水にしては五・七・五・七・七形式をやや逸脱した所謂「破調」歌であるが、それだけに牧水の心境をよく表現している。父親の具合が悪くなり帰郷した際に、生家の納戸に籠って詠んだであろうとされる一連の一首である。そんな牧水と僕自身を照らし合わせてみると、やはり「文学を志した」ことと「家業を継がなかった」という二点で共通点がある。僕自身は、当初は「絶対なるまい」と思っていた「教師」になぜなったのか?という点が「汝の意志」ということにもなる。青春の葛藤はいつでも酸っぱくほろ苦い。そんな話題も含めて、宮崎の未来の教師たちへ、僕にしか語れない内容を伝えたいと思っている。
本日から大学キャンパスは「清花祭」
僕は朝から宮崎南高等学校へと向かう
伊藤一彦先生と堺雅人さんの師弟関係が生まれたのが、南高校という思いも抱きながら。
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