対象の立場になって詠む歌よー第317回「心の花」宮崎歌会
2017-11-05
ワインに植物から地名まで擬人化そして「擬物化」のことなど
相手の立場になって表現すること
第317回「心の花」宮崎歌会が開催された。前日に西日本文化賞を受賞された伊藤一彦先生はもちろん、そして俵万智さんも加わり活発な批評が展開した。個々の歌の批評に関しては、作者の「発表未発表」の問題もあるのでWeb上では控えるとして、特に気になった話題について覚書としておきたい。それは標題・冒頭にも示したように「対象の立場」になって詠むということ。「ワイン」であれば「ワインの気持ち」になって、「そのような場面で飲まれている視点」から歌を詠むということである。ある意味で「擬人化」の問題であるが、技巧的というよりも歌を詠む上での「心の温かさ」のようなものとして、作歌にも批評の上でも持っておきたい姿勢である。
眼にする植物に愛情を持ちその成長の行くへに思いを馳せ、置かれている状況を心あるように動作化する。天象自然がもたらす所業は人為ではどうにもできないが、その荒れたる状況にも自らへ寄り添う心を見出そうとする。また先日の和歌文学会公開講演シンポジウムでも話題となったが、反転した「擬物化」という視線も興味深い。人為的な行為を自然の光景のようだと喩えることは、まさに自然との親和性を重んじた牧水の歌にも通ずるものである。また人同士であっても世代間の語彙使用の違いに着目し、その行動の行くへに温かい視線を送る歌なども。こう考えてくるとまさに「擬人法」などという”技巧”としての小手先な発想なのではなく、「豊かな心」の問題なのであると考えられる。互選上位歌や伊藤先生の5選歌にしても、上記のような着想の歌であるのは、「温かい心」「自然への眼差し」といった点で宮崎歌会の大きな特徴ではないかとも思うのである。
かくして歌を学ぶ充実した宵の口
「としより」などという語彙の使用奈何に関する議論も
すべては温かくありがたき宮崎歌会ならではであろう。
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