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秋ぞ立ついざみづからを新しくせよ

2017-09-08
「眼をあげよもの思ふなかれ秋ぞ立ついざみづからを新しくせよ」
(若山牧水『死か芸術か』)
実りの秋に新しい自分を・・・

牧水の歌の中でも好きな一首。牧水の作歌事情を考えると、恋愛問題は終わっていたがなかなか立ち直れない「みづから」を、命令形を三度も使用して奮い立たせる歌である。その力動的な韻律とともに、「秋ぞ立つ」という季節のうつろひの中で新たな「みづから」を見つけようとする思いが感じられる。そう、秋の”気”というものは新たな何かが生まれ実る季節である。ちょうど7日付の伊藤一彦先生の短歌日記(フランス堂HP上に掲載)にも、「かへり来よ桜紅葉の散るころぞわがたましひよ凪く帰り来よ」(牧水『別離』)が引用されていた。桜の木は早々に紅く染まり落葉の準備を始め、新しい段階に進んでいるということ。牧水の「わがたましひ」もまた同じ。

秋は終息の季節と捉えられがちであるが、実は新しい何かが始まる季節でもある。この日の朝も自宅の駐車場を出ようとすると、今まででは思いもよらぬ数のトンボが空中を乱舞していた。その中に大変仲睦まじい”つがい”がいて、前後に結合しつつ空中で踊るかのような動きをその周辺で繰り返している。彼らにとって待ちに待った秋が来ているのだと、その姿に微笑ましい気持ちになった。吹く風は涼しく青空は高く月も夜空ふかく輝いている。よく行く公共温泉では、湯温が聊か下がった気がした。いたづらに熱い湯ではなく、38度前後にじっくり浸かるのが身体へも好影響をもたらすだろう。既に馴染みとなった面々も増えて、様々な四方山話をしながら日々の疲れを癒し、ひたすら「実り」を待つばかりである。

そういえばいつも9月は好機に恵まれる
ただひたすらに歩み来た結果
1年ごとに生きる「潮目」があるということ。
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