無数の小さな傷を創ること
2017-08-28
「図式的に言えば、歌人は一つないし幾つかの〈主題〉を育てつつ日々を生き、個々の一首一首制作の場で〈主題〉にかかわりつつ〈発想〉を得て行くという
ことになる。」(佐佐木幸綱「発想・主題」1990年『國文學 短歌創作鑑賞マニュアル』)
自らの〈主題〉は何だろうか?そんなことを探り考えてみる。作歌してきた歌を振り返ってみても、歌会などでそれなりの評を得たものは、確かに〈主題〉が立っているように思われる。だが日々の生活で着実に歌を創ろう、ましてや”量産”しようなどと考えると、むしろ〈発想〉とか〈素材〉から起動し始めてしまい、〈主題〉の立たない歌になることも少なくない。もちろん表現そのものの未熟さもあろうが、この〈主題〉の問題は作歌活動の上でとても大きい。
「実存そのものに直接に刺さる歌」(佐佐木幸綱「現代短歌の魅力」1986年『國文學』)こそが「古典」の「述懐」という「観念性」を振り払うことである、という評語は、まさに心に直接刺さる。「生きるとは、生活のなかで無数の小さな傷を創ることであり、その傷こそがつまり〈私〉にほかならないのである。」「自身に踏みとどまりつつ日常的な私を超える〈私〉をうたおうとしている。」(佐佐木幸綱「時代の柱」1997年『短歌年鑑』)といった「境地」が求められるということ。
模索・思索・思案
あらためて今年の2月「短歌の主題」御講演を反芻する
「無数の小さな傷」がまさに「創」(きず)なのであろう。
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