「ことば」あるゆえ現実を知るー宮崎大学短歌会から
2017-08-15
世界は「ことば」でできているとも「平和」「戦争」といった語彙で語り合うこと
風土・居住地で違う「津波」ということばの捉え方・・・
72年目の終戦記念日。先ほど来の激しい雷鳴で、目が覚めた朝であった。覚醒してからの意識が、「これが雷鳴でよかった」などと考えさせる。「神鳴り」という語源のごとく、目に見えない神霊的な存在が、人間に警告を発しているのか。自然との融和もまた「ことば」による作用によって、古来から人々は対応してきたのであろう。翻って、戦時中の体験がある方ならば、空からの大きな音は空襲の音を連想させるかもしれない。自分のことだけを考えて、うかうか寝てもいれない。TV映像などで耳にする、あの爆弾が落下してくる際の音の悲壮なことよ。大空からの閃光そのものに、耐え難い体験が蘇ってしまう方も多いだろう。だがしかし、そうした人為的な醜い争いで命の危機に曝された経験を持つ方も次第に減ってきている。先日も小欄で紹介した『角川短歌』8月号別冊付録「なぜ戦争はなくならないのか」は、紹介しきれない様々な考え方に溢れている。中でも「日露戦争」の悲惨な体験者が政権内部にいなくなった時期に、「太平洋戦争」が勃発したといった趣旨のことも書かれていた。また政権のみならず、「国民が引き起こした悲劇」だといった趣旨もあった。「なぜ戦争が・・・」という問い自体を否定するものもあった。
お盆の最中であるが、宮崎大学短歌会を開催した。会員の学生の高校時代の友人で、昨夏の牧水短歌甲子園を経験した九州大学短歌会の2名の学生さん、先日の「サラダ記念日30年」の折に公募された短歌が入賞した熊本大学の学生さん、さらには茨城県出身の会員のお友達を加えて、全11名による賑やかな歌会となった。題詠は夏にちなんで「祭」、若い年代の祭りに対する感覚が興味深かった。「縁日」「花火」「神輿」「甲子園」などの場面を中心に、様々な捉え方の歌があり批評も温度同様に白熱した。いつも感心することだが、牧水短歌甲子園を経験することで、自己の歌作りはもちろん、他者の歌の読み・批評・修正案などを具体的かつ的確に指摘した有効な議論方法が身についている。短歌会そのものが、この経験者に誘発されて議論が活発にならないことはない。高校課程内の授業でいかに学力を育てるか、などを「国語教育」の立場から考えている身として、実に微妙な葛藤を抱かざるを得ない。「理解」「表現」「思考力」「想像力」「言語感覚」を育てるなら他言は無用、ただ「短歌」のみであるような思いに至る。さて聊か興奮して趣旨が逸れたが、この日に一番考えさせられたことひとつ。ある短歌に詠まれた「津波」という語彙に対する考え方である。3.11以後、この語彙に対する感覚が明らかに変化したであろう。その時期前後が活動休止・再開の時期と重なった要因もあろうが、サザンの「TUNAMI」もあの日から、ライブをはじめ巷間で聞かれることもないように思われる。歌会中にも議論されたが、茨城や関東の者と九州の者とでは、その語感に差があるようにも思われた。だがしかし、重要なのはそのことばに乗った個々の「経験」を実感として語り合い、語り継ぐことの重要性である。ある学生が「そのように言葉の使用を抑制する社会が問題だ」といった趣旨の指摘をした。同感である。それは「一語」に敏感である「短歌」を考えるからこその発想のようにも思う。「ことば」への信頼が社会の中で大いに失われているいま、こうした感覚を世代を超えて共有することに大きな意義があるように思われる。だからこそ「短歌」なのである。
「祭」を興じ合える「いま」
多くの国語専攻の学生たちも参加させたい短歌会議論
72年目の夏、いま短歌とともに「平和」を創り続ける、
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