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「なぜ戦争はなくならないのか」ー金子兜太の一言

2017-08-11
「ここ青島鯨吹く潮われに及ぶ」
(青島海岸・金子兜太の句碑から)
ただ一言「『物欲』の逞しさです。」と

角川『短歌』8月号の別冊付録に「緊急寄稿 歌人・著名人に問う なぜ戦争はなくならないのか」がある。小冊子ゆえ最大12行ほどの語数で、何人もの歌人・著名人がこの「問い」に答えている。そんな中で御歳98歳になる俳人・金子兜太さんは「一言で答えさせてください。『物欲』の逞しさです。」で始まるわずか3行の文を記している。さすがは俳人、この素朴な答えにはむしろ大きな説得力がある。「物欲」は自ずと「金欲」をに連なり、豪奢が豪奢だと自覚できなくなる負の連鎖が生じ、他人を傷つけても自らが物理的に「得」をする方法を選択してしまう人間の弱さが垣間見えてくる。

金子兜太さんは、「あらゆる欲のうちで最低最強」と続け、「制御不能」で「付和雷同」を生みやすいゆえに、「人間の暮らし」が「武力依存を募らせる因」であるといった趣旨を記す。考えてみれば、現代社会で「不安」を覚えるすべての事例が、こうした点に根本があるようにも思われる。少なくとも文学に向き合えば、「物欲」が「最低」であるということに気づくことができ、「制御」しつつ他者に左右されることなく確固たる「自分」を持つことができる。そして「自分」を持ちつつも、それが傲慢ではないか?と常に「自己」を鏡に映して省みる必要もあろう。歌人・俳人らが標題の問いに敏感に反応するのは、こうした豊かな心をことばにして社会という「鏡」に問いかけているからである。

幼き「物欲」の卑劣
いまあらためて一人ひとりが考えるとき
金子兜太さんの逞しい筆の文字に学ぶ
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