手を出そうとしない少年

2017-08-10
所謂一つの「因縁をつける」
「ラシャメンの処へ這込んでマドロスにいんねんをつけられた情人とはちがいやす」
(『日本国語大辞典第二版』用例から『西洋道中膝栗毛』仮名垣魯文)

少年はいつものように家が近所の友だち二人と、公園に遊びに行った。その公園は都会には珍しく、由緒ある寺の裏山にあり墓地の奥の鬱蒼とした樹々の茂る崖の半ばあたりに造られたもので、その傾斜を利用したかなり長い距離の滑り台があった。まさに子どもたちの冒険心をくすぐる場所であったが、滑り切って底の砂場まで行くと、滑降する台の横に設置された長い階段を戻るしかなく、袋状の地形の中に閉じ込められたようになってしまう”怖さ”もあった。決して「独り」では行き難い場であったが、その日は友だちと勇気を出して行こうと決心したのであった。しばらくその滑り台で遊んで底の砂場にいると、上から別の二人の少年が滑り台を降りて来た。少年はすぐさま小学校で1年下級の3年生二人だとわかったが、特に相手もせずに遊んでいると、向こうから「俺たちは5年生だ」と言って、少年たちに所謂一つの「因縁をつけて」来る事態となった。

冒頭の『日国』により意味を示しておくならば、「無理な理屈をつけて相手を困らせる。言いがかりをつける。」とある。少年は脳裏に「これか!」と思いながらも、聊かの不安の中で奴ら二人の次の言動を待った。奴らが虚偽の学年を言ったのには根拠がある。奴らのうち一人の兄が5年生で、小学校や英語塾でも幅を利かせており、何か自分に気にくわないことがあると、殴ったり膝蹴りを加えたりする乱暴者であった。事実、英語塾で少年は、その兄が他の者に攻撃を加える現場を目撃したことがある。この公園で出会ってしまった弟は、兄の暴力的行動の権威の傘下で、少年たちに無理強いをしようと目論んでいたのだ。少年たち三人のうち、一人は隙を見てその場から逃げ出した。残るは少年と一人の友だちは二人とも「平和主義者」で、奴らと二対二ではあったが、暴力で対抗しようとは決して考えなかった。すると奴らは少年とその友だちに(仲間内で)「喧嘩をしろ」と強要し始めた。仕方なく二人は相撲の「相四つ」のように組んで静止していたが、「それは喧嘩じゃない」と言って奴らは少年たちを煽った。そんな苦渋の時間がしばらく続いたが、とうとう気持ち的に耐えられなくなった少年は、大きな声で泣き出してしまった。「泣き叫ぶ」というのはこういうことをいうのだろう、その絶叫ぶりに驚いた奴らは、少年を仕方なく解放した。果たして、この少年の言動は「情けない」ことなのかどうか?少年は全身で表現できる最大限の平和的手段を使用して、その場から逃げ出した。のちに奴の兄から報復を受けることもなく。

少年は英語塾で「泣き虫」と言われた
だがその兄弟に力で勝とうとは決して思わなかった
少なくとも英語では、1年前後する奴ら兄弟には決して負けなかったとさ。
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