「自分」の中にある「文化」のみなもと
2017-07-17
先祖の墓参わが生まれ来しみなもと
意識・無意識に引き継いでいるもの
高校生ぐらいになると勉学に怠惰な気持ちも生じるゆえ、「古典」に対して「なぜ現在は使われない古いことばや文を勉強しなければならないのか?」と疑問を口にする者も多い。僕も現職教員の頃、こうした場面によく直面した。大学で教員養成に携わってからというもの、「中等国語教育研究」の講義などで学生たちに、こうした場面を想定してどのように中・高生を説得するかという場面指導演習を行うことがある。その際に僕自身が最後に一例として示すのは概ねこういう内容である。「君らは両親なくして生まれておらず、その両親もまたそれぞれに両親がいなければ生まれておらず、同じように先祖代々のDNA(遺伝子)を引き継いでいま此処にいられる。それと同じように君らがいま此処で使っている日本語もまた、そうした蓄積の上に初めて成り立っている。」
少なくとも大学生であれば、こうした内容にそれなりの納得を示す。「自分」の中に持っている「日本語」は、自分だけの存在では獲得できない「文化」であるわけだ。その始原は誰しも、たぶん母から投げ掛けられる「ことば」から始まって、次第に「言語」を獲得して来たということになるだろう。更に「大人」になって分析的に考えられるようになると、「言語」以外の「行動」も母や父から継承したものがあることに気づかされる。日常行動の順序、他者とのコミュニケーション方法、食事の習慣、食べ物の好み、動植物の好み等々、まさに「性癖」といった遺伝子次元で、自己の中に備わっている傾向があることを捕捉していくことこそ、年代を重ねるという意味ではないかと思うのである。
故郷は場所のみにあらず
こうした「言動」を引き継いだ場所
個々の人の中にこそ「文化」があることに自覚的でありたい。
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