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「サラダ記念日30年ーそして宮崎へ」トーク開催

2017-06-26
「日向夏ドレッシングのような明るさにトマトを濡らすはつ夏の雨」
(俵万智賞受賞作・宮崎市・小寺豊子さん)
「畑から曲がったキュウリ連れ帰りサラダ作れば真っ直ぐ美味し」
(一般の部特選受賞・宮崎市・川平陽子さん)
「他人の恋見つつ正午の食堂でオクラサラダをねばつかせおり」
(学生の部・特選受賞・久永草太さん)

今年は、売上280万部のベストセラー歌集『サラダ記念日』が出版されて30年となる。このタイミングで俵万智さんが居住する宮崎に、自分もいることの縁をあらためて感慨深く思う1日となった。宮崎日日新聞社主催で標題のようなトークショーが開催された。新聞社ビル最上階にあるホールは約250人の熱心な短歌愛好家で埋め尽くされたが、聞くところによると入場券は新聞掲載から30分ほどで締切ったらしく、俵万智さんの人気は根強い。また冒頭に記した「俵万智賞」や「特選」に代表されるように、総計971首(一般581首・学生390首)の短歌応募があり、選者となった俵万智さんによれば、そのレベルも高く新鮮であったということだ。日常生活で「あっ」と思ったことを思いっ放しにせず言葉を探す、という「生き方」ができるというのは、短歌をやっている大きな意味であると万智さんの云う。そんな中で宮崎大学短歌会でともに歌を学ぶ久永草太さんが「特選」を受賞したことは、一同の大きな喜びであった。

トークでは宮崎の短歌を長年支えてきた伊藤一彦さんも加え、『サラダ記念日』出版前に伊藤さんが原稿段階で歌集を読んでいたこと、「なぜ本屋に小説ばかりが並び歌集が少ないのか?」という疑問を「自分の本」で改善できた喜びなどから語られ始めた。出版当時、万智さんは高校教員であり「月曜日から土曜まで(教員としての勤務)は平常心で過ごせた」が、「笑っていいとも」「徹子の部屋」などの番組出演や多くの取材を受ける時代の寵児であったことがあらためて紹介された。万智さんの歌は「連作の妙」にあると伊藤さん、短歌愛好者のみならず一般の人々にも受けたのは、「読んでよくわかる、自分が嘗て思っていたことのようで、実は奥深い」からだと云う。まさに「1300年の歌の歴史の最先端」として「定型を守り、文語と口語を自然に織り交ぜた現代語」であると歌壇での評価も高く、「啄木・牧水・寺山修司・俵万智」と明治以降の短歌史に位置づけられる存在であると云う評価は興味深い。その評価観点の一つとして「意味よりもリズム」は、誰でもわかる平易な表現の秘訣でもあり、僕としても諸々と考えてみたい視点である。また万智さんは「今を生きる歌人」であり、住んでいる場所に肯定的なものを見出すと伊藤さん。多くの人々は「辛い過去と不安な未来」に怯えるが、「今を大事に」から宮崎の良さも万智さんに教えられると云う。最後に今回の短歌募集に見られたように潜在的ポテンシャルが高い方々が多い宮崎を、ぜひみなさんの力で「短歌県」としていけるように歌を作り続けたいと、万智さんの抱負が語られて2時間の表彰・トークがお開きとなった。

「原作・脚色・主演・演出=俵万智、の一人芝居」
「生きることがうたうことだから。うたうことが生きることだから。」
歌集「あとがき」が語られると、胸の奥に熱いものを感じたのは僕だけではあるまい。
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