「キイハンター」土曜の夜の楽しみ
2017-06-18
「非情のライセンス」という曲幼くわからなくても観たかった番組
「彼らの求めるものは自由、願うものは平和」
女優の野際陽子さんが亡くなられた。心よりご冥福をお祈りいたします。野際さんといえば「冬彦さんの母」としての奇怪な名演技が一世を風靡した。サザンの「涙のキッス」が主題歌だったこともあり、毎週欠かさずに観ていた記憶がある。だがそれ以上に野際さんの印象が刻みつけられているのは、「キイハンター」への出演である。僕自身はまだ幼稚園から小学校低学年であったので、土曜日だけは午後9時からのテレビを観られるという特別な感じに嬉しさを覚えていたこともあった。また土曜日は祖父母の家に遊びに行く機会も多く、そこでも必ず「キイハンター」を観ようとするので、祖母が「なんて難しい番組を観るの」などと言っていたのが思い出される。それほどに、このハードボイルド的番組には魅せられていた。
丹波哲郎や千葉真一というアクションスターの出演とともに、毎回の筋書きに人間味が感じられたのも、幼少ながら僕が魅せられていた理由であるようにも思う。オープニングタイトルの曲が特に格好よく、各出演者の格闘シーンが展開した後でポーズを決めて静止画となるあたりは、自らも想像した役柄を頭の中で創り上げ、ポーズを作る真似事をしていたのも思い出す。そのオープニングタイトルをあらためてYouTube(「キイハンター」カラーのオープニングタイトル)で観直してみた。曲の最後の方に流れるナレーションは冒頭に示したように「彼らの求めるものは自由、愛するものは平和」で、その直前には「今日もまた地球上のあらゆるところに陰謀・裏切り・暴動が渦巻く、その渦中に飛び込む彼ら」と語られている。いわば「キイハンター」という存在が、「自由と平和」を獲得する密偵として命を賭けているという想定となっているわけである。まさに60年代から70年代へ移行する時代の空気を反映してはいるのであるが、それだけに今日的にも貴重なメッセージであるようにも思う。「自由と平和」は「非情の掟」の中で闘ってこそ手に入れることができるのだ。
番組の最後は野際さんが歌う「非情のライセンス」
その妙に高い声に土曜の夜が更ける幻想を幼心に抱いていた
また一人昭和の名優が旅立ってしまった
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