心の花宮崎歌会六月ー晋樹隆彦さんをお迎えして
2017-06-04
酒にはいくら、煙草にいくら、を費やして来たそして歌人としては野球に一番詳しいと
歌人・晋樹隆彦さんの魅力
心の花宮崎歌会では、毎年6月にお客様をお迎えして開催している。今年は第18回若山牧水賞(2013年)受賞者である晋樹隆彦さんをお迎えした。個人的には、昨年の「心の花全国大会」でご挨拶した折から御礼状を差し上げたのを契機に、晋樹さんが社長を務める「ながらみ書房」出版の短歌誌『短歌往来』本年3月号に評論を寄稿させていただく光栄に預かっていた。3月に上京した際には、ながらみ書房の事務所に急ながら立ち寄ったが、残念ながら晋樹さんはおらず、お会いできなかった。こうした意味で、直接の御礼をはじめとして様々なお話を伺いたいと思っていたもので、またとない機会となった。会の冒頭では晋樹さんから、短歌や「心の花」に関わりはじめた頃の、貴重なお話が伺えた。1971年出版の『男魂歌』までの経緯をはじめ、佐佐木幸綱さん・伊藤一彦さんとの若かりし日の交流のこと。そして様々な歌人の方々との交遊録が紹介されて、その懐の深いお人柄をあらためて窺い知ることができた。
歌会に入ると通常通りにまずは各歌に対して会員が順番に評をつけ、その後は晋樹さんから評をいただくという流れで進行した。この日は歌も43首、参加者は50名以上に及んでいたようで、一首に費やす時間も限られたが、伊藤一彦さんや俵万智さんの評も随所に加わり、充実した評を聞くことができた。それだけにあらためて、歌を評する際の適切な視点や要所を抑えたコメント力について深く考えさせられた。短歌そのものが精緻に集約された表現なのであるから、その評も冗長なものは避けるべきであろう。「言葉を選び、誰にでも伝わる表現を創る」このような点で歌人の方々が非常に長けた力をお持ちであることを再認識するのである。この点は、研究者として心から見習いたい感覚である。
さて、個人的には晋樹さんとの野球談義が実に盛り上がった。「歌人で一番よく野球を知っている」と豪語される晋樹さん、「野球を」となれば人並みには負けない自信が僕にもある。過去の「後楽園球場」に幼少期から出向いていた経験が、年齢を超えて晋樹さんの記憶と重なる。その当時(昭和40年代)、1塁側ダッグアウト上で私設応援団のリーダーを務めていた人の名前と職業を僕が父から伝えられて知っていたことには、さすがの晋樹さんも驚いている様子であった。以前に葉書のやり取りをした際にも、晋樹さんの「中西太」を詠んだ歌に対して、「私も野球詠を」と応えながら、まだこれといった短歌を創り得ていない。過去の「後楽園」の記憶のみならず、今後はぜひ短歌でも晋樹さんを唸らせるものを詠もうと決意した宵でもあった。最後に晋樹さんの宮崎歌会の印象として挙げられたことを覚書としておこう。「背伸びをしない。日常の思いから言葉を積み上げる。そんな歌が多いように思います。」
「飲みながら癒していきましょう」医師のことば天の韻(ひび)きのごとく聞ゆる
(晋樹隆彦 第4歌集『侵食』より)
やはりよき歌の源には「酒あり」のようである。
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