小学校1年生の笑顔と出会う
2017-02-21
小中一貫校へ芸術体験授業へ文字を使用しない国語授業に挑戦
「筆箱は使いません」と担任の先生の指示で始まる
この3年間ほど関わっている芸術家派遣事業で、日向市の小中一貫校を訪れた。今回は3日間のプログラムであるが、初日と最終日は僕が「授業者」として小学校1年生に「音読・朗読」の授業を実践する計画である。初日は「たにかわしゅんたろう」さんの詩を、いかに「文字」に依存しないで音読し暗誦するかといったテーマの内容を設定した。教室に出向くと、人懐こい元気な笑顔が僕を出迎えてくれた。この出会いの瞬間こそ、まさにコニュニケーションの始まり始まり。「おはようございます」と元気に言葉を交わして、黒板の前で準備を始める。こうした休み時間には、まずは一人ひとりに挨拶をする気持ちが重要だ。人見知りもしない笑顔が、僕に興味を持った視線を向けてくれている。まずなるべく個々の子どもたちの目を見て、「おはよう」の言葉を返していく。
最初は「おならうた」絵本の読み語りから。「いもくって ぷ ・・・・」という調子の繰り返しであるが、次第に子どもたちから笑いがこぼれる。その後、黒板にまずは「文字表記」を一通り貼るのだが、「ぷ」「ぼ」「す」といった「おなら」の擬音語部分を一旦は貼るが、「それは文字ではないよね」と言って剥がしていく。そのカードが紙と印刷された「文字」であることを強調する。そこで「パンパン、パー」と手拍子2拍に手を広げる体操を、この「詩」のリズムを体感させる。その後は「みんなの感じるおならの音」を再現すべく「いもくって」を全員で音読した後に一人ずつ声を出してオリジナルな擬音語を発声していく。これで机間巡視をしながら、全員と必ず1度は目を合わせて交流する。2つ目の詩は「かっぱ」(ことばあそびうた)。「かっぱ」のぬいぐるみを見せ、「ラッパ」の玩具を見せ、「なっぱ」の実物を見せる。すると子どもたちは、その言葉の共通点に気づき始める。さらに「現物」を見せながら詩を音読していく。なかなか舌が回らない様子ではあったが、次第に「ことばあそび」の楽しさを味わえるようになる。最後は「わかんない」という子ども向けの詩。「みかん」「やかん」「じかん」をやはり実物(「じかん」は時計を指す)を見せながら言葉の共通点を見つけていく。袋の中に隠したものは何か?と質問を投げかけると「缶」とその押韻に子どもたちは気づいている様子だ。そして僕と交互に1行ずつ詩を音読して、見事に一つの詩を朗読し終えた。ここに「わかんない」の詩を紹介しておこう。
「わかんない
たにかわしゅんたろう
わかんないけど
みかんがあるさ
ひとつおたべよ
めがさめる
わかんないけど
やかんがあるさ
ばんちゃいっぱい
ひとやすみ
わかないけど
じかんがあるさ
いそがばまわれ
またあした」
授業終了後も何人かの子どもたちが近くまで来て、「こんなことばにもきづいた」とその例を伝えに来てくれた。まさに「授業者」として至福の時間である。本日は、演出家の方による演劇的ワークショップが予定されている。
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