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桑田さんとあめましておめでとう2017

2017-01-01

ヨシ子さんへの手紙
ー悪戯な年の瀬ー
桑田佳祐年越ライブ2016

年越しには、誰しもが特別な感情を持つであろう。幼少の頃からそのように育てられたせいか、はてまた『古今和歌集』などを研究対象にしたせいか、僕の場合は特に「年越し」へ深い思い入れがある。次年度へ向けて明るい光を求めたいと思っていた頃に、標題の桑田さんのライブチケットの当選が報された。抽選へのエントリーは30日と31日、まあ30日が当選すればいいかと思いきや、30日はハズレで競争率の高いであろう「年越し」が当選してしまった。誠に人生というのは思い込みでは判断できない機微が潜んでいるものだ。きっと2017年は開運の年になりそうな予感となった。

大晦日の宵の口、通常であれば紅白にでも興じる時間帯である。横浜アリーナへと早々に出向き8時の開場を待った。開演は当初9時半と告知されていたが、「演出の都合上」という理由で9時45分が場内アナウンスで告げられた。元日午前0時の直前にある曲を歌い終わり、45秒からのカウントダウンを開始しなければならない、緻密な計算の上に「年越しライブ」は成り立っている。僕らの職業でも講義や研究発表などにおいて時間的な「演出」が必要な場合も多いが、殊に大学教員はそれに対してルーズな感覚を持つ向きが目立つように思われる。桑田さんもMCトークの展開も巧妙であるが、こうした秒単位の「演出」ができてこそプロと言えるのであろう。

チケットの転売・高騰を避けるために座席指定は入場時に「本人確認」を済ませるまで分からない。広い横浜アリーナのどの席であろうかと期待と不安で座席指定券を受け取ると「アリーナ席」であった。他の会場のアリーナならば中心の席であるが、此処では「センター」と呼ばれる場所が本当の正面の中心である。だがしかし指定された座席に行ってみると驚いたことに、「バックステージ」であった。ステージのすぐ後ろでダンサーたちが踊る通路のすぐ後ろ、歌う桑田さんを後ろから観る位置である。聊か複雑な心境であったが、それにしても桑田さんやバックバンドやらにこれほど近い位置は他にない。ライブ中の「白い恋人たち」を歌う際には、ほぼ5mの位置に桑田さんが駆け上がってきて、手を振り返せば眼が合うような感覚を持ったほどであった。僕の人生で「最接近」を経験し、新年を寿ぐ時間を過ごすことができた。

人はなぜ感涙するのだろうか?2016年もあと30分ほどになった23時30分頃から演奏された「君への手紙」を生で聴いていると、自然と涙が溢れつつ僕は歌詞を口ずさみ続けた。「愛しBrother, sister, mother, and father 時計の針を止めて」のサビの部分に来ると、自らの親兄弟の顔が脳裏に浮かび、そして人生を深く考えさせるような回路になってしまったのであろう。文学でもそうであるが、「読みを深める」ということは「自己を起ち上げる」ということである。「己のいま」と「君への手紙」がリンクしたとき、人の感情は豊かな「涙」を催すことができる。昨年はボブ・デュラン氏がノーベル文学賞を受賞したが、「歌詞」の文学性を考えるとこの曲は桑田さんの新たなる名曲の一つになるだろう。このライブ感、この表現力、そしてことばの巧みな選択、伝える力、どれをとっても文学や国語教育研究にも参考になる桑田さんのパフォーマンスに酔い痴れる「あけましておめでとう」となった。

人生でも価値ある「年越し」を経験した。
今年はどんな歌が詠めるだろうか。

10月に開催を担当する和歌文学会も含めて、
「歌」を深く追究する1年を年頭の抱負とする。
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