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餃子入っちょらん

2016-12-23
中華料理店のお姉さん「780円ね〜」
「あれ!餃子入っています?」
「入っちょらん!」

口頭表現上の形態模写癖があると、かねてから自覚していた。学校や職場など身近に尊敬できる人がいると、その人の喋り方や身体表現上の特徴を「模写」してしまう癖である。大学受験講習でお世話になった全国的に著名な英語の先生の講義の名調子は、僕の講義の随所に「語り口」として保存されている。大学学部の指導教授の演習における『万葉集』の朗々たる読みぶりは、やはり歌を講義で音読した際には、自ずと発揮されてしまう。中国詩歌を専門とする尊敬する先生は、講義の時間が足りなくなってくると「時間の関係がありますから」が口癖であったが、そのフレーズを僕も拝借する際、いつもその先生の口調になってしまう。自身の「尊敬」の歴史が、日常の「口語表現」に保存されているのは、人生の年輪を自覚する上でもよいと感じている。そして今、僕は東京を離れ宮崎に住み、まもなく4年が経過しようとしている。自身が方言の影響をどれほど受けているかを客観視してみたいという気持ちになる場面があった。

冒頭に記した中華料理店での会計時の会話。比較的馴染みの店であり、僕が毎回ほとんど「五目焼きそば(半チャーハン)セット」を注文するものだから、店のお姉さんはこの日も会計時にその値段のみを僕に告げた。「ね〜」の部分には宮崎特有のイントネーションがある。この日は好きな餃子も注文していたので、僕は自らお姉さんに問い掛けた。すると「入っちょらん」という返答が大変柔和な響きに聞こえたので、思わず「入っちょらんね〜」と僕も呼応した。ことばというのは、反応であり適応でもある。その小さな会話がとても気に入ってしまった。宮崎弁での「・・・しちょる」という動詞に続く言い回しが、誠に穏やかに優しく響くと感じられる。同様に宮崎方言の「よだき」などは、若者言葉の「ウザい」に共通する語感だが、遥かに可愛らしく柔和に相手に伝わるので、僕も使用頻度の高い語彙である。この語は古語で『源氏物語』にも「大がかりだ」「ものうい」といった意味での用例が見られるのも心強い。その後、ショッピングモールへ買い物に行くと、家庭用宅配水タンクのキャンペーンをしている若い女性に声を掛けられた。試飲をして諸々話していると、彼女は「どこから来たんですか?」と僕に問い掛けた。その上で「標準語を久しぶりに聞いた〜」と言うのである。やはり僕はまだ標準語なんだ、と聊か複雑な心境になり、「急いじょるから」と心の中で呟くに止めたのだった。

東京から移住して15年以上の親友は
宮崎弁以上に宮崎弁だとその奥様は云う
評価観点に「人柄の優しさ」がある県として、方言の穏やかな響きがいい。
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