優勝校に挑むー「宮大短歌会」短歌甲子園初参加
2016-12-12
「ぐちよだきい「お前の嫁に期待する」義姉(あね)と結べよ平和協定まぶたの上動かぬ君のほくろ見て平和な土曜日も一度眠ろう
雪かきに手と手とりあう東北も小雪にはしゃぐ宮崎も平和」
(ピースフェス短歌甲子園出詠歌・宮崎大学短歌会3名)
この日、宮崎は「青島太平洋マラソン」に県内外から1万3千人のランナーが参加し、運動公園から市内へ連なる国道バイパスは自動車通行止めで快晴の空の下、ここにある「平和」を享受するかのように思い思いの走りが見受けられた。市内中心部にあるアートセンター前でその様子を見ていると、ジムで懇意にする方が走りながら声を掛けてくれたり、大学で僕の講義を受講する学生たちなどの顔も発見し、相互に手を振るという和やかな雰囲気の中、ゼミの学生たち3名と僕は「決戦」に挑む準備をしていた。今夏、日向市で開催された全国規模の「牧水短歌甲子園」で優勝した宮崎商業高校に、今月結成したばかりの「宮崎大学短歌会」が挑むというイベントに参加するためである。「走ろう平和の道 つなごう愛のバトン」と題した「PEACE FESTIVAL」は、音楽・朗読・落語等々が披露される「愛と平和の祭典」。市民マラソンもこうした文化的事業も、「平和」あってのことだという認識を新たにする機会でもあった。
「母親が投げる平和にバット振る少年の影大きく伸びる
似合わないネクタイを君が締めている平和にかたちがあるなら水玉
終わりゆく今日を平和と定義して流星群を見ていたあいつ」
(ピースフェス短歌甲子園出詠歌・宮崎商業高校3名)
「短歌甲子園」についてはご存じない方もいらっしゃるだろう。1チーム3名で相互に「題詠」か「自由題」かで歌を出詠し、1番バッターから自らの歌のアピール、そして相手方の歌への質問・応答を3番バッターまで相互に対戦する。チーム内では他の人の歌をアピールする場合が多く、双方の歌を如何に「読めて」いるかが大きく勝敗を左右する。そしてまた相手チームに質問する場合もその歌を敬意を持って「読み」、良い点を取り上げた上で推敲すべき部分や「読み切れない」内容を質問する。まさに「短歌」を中心とした対話的な言語活動である。全員の攻防が終了した後に、3名の審査員が紅白の旗を上げて本数が多い方が勝ちとなる。この日もまさに熱戦となり優勝校は手強いと思いきや、まだ短歌を学び日の浅い大学生も「がっぷり四つ」に組み合い、舌戦を展開した。前掲した「平和」を題詠とする短歌もそれぞれに高校生・大学生らしい内容で好感が持てた。最終的に審判の判定は「宮崎商業高校」に旗3本、優勝校の貫禄を見せつけた。今回、歌作りから作戦会議まで学生たちと付き合って感じたことであるが、他者を魅了するには論理(理屈)では通用しないということ。大学での教育はアカデミックな教養を育もうと、往々にして「論理」(理屈)に偏向しがちであることを痛感した。宮崎商業高校の生徒たちは実に素朴に歌を詠み、素朴に質問をしていた。「理屈」ではなく、まさに赤裸々な人間性を前面に押し出すということ。「教育」において、実はこんな点こそが大変重要なのかもしれない。歌人の方々のことばがなぜ心に響くのかと考えれば、そこに「理屈」がないからである。「説明」「理屈」の歌がよくないとされるのも納得である。僕自身も和歌を「理屈」で考え過ぎているのかもしれない、特に『古今集』を研究している身としてそんなことを考えた。
大河ドラマ「真田丸」も最終回「前夜」
信繁(幸村)の生き方はまさに「理屈」ではない
「論理」を翳した偏向社会が、もしかすると人間の心を蝕んでいるのかもしれない。
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